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テーマ : 静岡市

大盛況✿お花のサブスク 心潤す「花のあるくらし研究所」(静岡市葵区)【記者さんぽ|個店めぐり】

 近頃ときどき耳にするようになったお花のサブスクリプション(定額制)サービス。静岡市葵区上足洗のお花屋さん「花のあるくらし研究所」のサービスが評判を呼んでいるという情報を得ました。素敵な名前も頭に残り、早速訪ねてみました。

柔らかな笑顔が印象的な「所長」の中村将史さん
柔らかな笑顔が印象的な「所長」の中村将史さん

 JR東海道線の静岡駅から車で15分。「研究所」は白を基調としたシンプルな外観です。中に入ると、シックな色合いの黒蝶ダリア、鮮やかなコチョウラン、紅葉したアブラドウダンなど、個性豊かなおよそ20種類の草花が並んでいました。柔らかな笑顔で迎えてくれたのは「所長」の中村将史さん(36)。

photo01 椅子が吊るされたり、身長計が飾られたり。遊び心が感じられる店内です
 取材は平日の昼下がりでしたが、人がひっきりなしに出入りします。多くはサブスクの利用者。「一緒に花の楽しみ方を研究する」という意味合いで、中村さんは利用者のことを「研究生」と呼んでいるそうです。「研究生」はそれぞれに慣れた手付きでスマートフォンの専用画面を「所長」に見せ、「日替わりブーケ」と書かれた机から花束を持ち帰って行きました。皆さん、さらりと花束を手にする姿が素敵です。お客さんに片っ端から話を聞いてみました。

 「毎日新しい花を生けている。家族との会話も生まれている」(葵区、60代女性)

 「花のために仕事を早く終わらせ、部屋も片付けている」(葵区、40代女性)

 「花はないと死んでしまうわけではないが、あると心が潤う」(葵区、30代女性)

 「飾る花器や場所を毎日変えて、何日も楽しんでいる」(葵区、60代女性)…

 サブスク利用者は現在約350人。ご近所さんが、生活の合間に立ち寄るケースが多いようです。 

photo01 サブスク利用者は、スタッフの説明を聞き、好きな花束を選んでいました
 1カ月に何回花を受け取ることができるかにより、サブスクにはいくつかコースがあります。花を毎日受け取ることができるコースは開始2カ月で定員200人が満員に。追加で30人募集しましたが、再び満員になったそうです。
 毎日花を受け取る人がいて、赤字にならないのか。率直な疑問をぶつけました。
 中村さんは「サービスを始める前は週1くらいの利用が多いのではないかと予想していましたが、意外と毎日来てくださる方が多くて…。うれしい悲鳴です」と答えてくれました。ちなみに、それでも赤字にはなっていないそうです。

photo01 県内産のバラのブーケを受け取れるコースもあるそうです
 これまでの歩みも聞きました。中村さんは浜松市出身。幼いころから土いじりが好きで、20歳を超えた頃、静岡市内の花店でアルバイトをしました。「花を買いに来る人はみんな優しい顔になる」。特別な日を彩るとともに、日常にも潤いを与える花。その魅力を強く感じる一方、花の需要は減少傾向にあります。花を飾るという文化そのものがなくなってしまうのではないかと、危機感を感じるようになったそうです。 

 「花は手入れの仕方が分かってくると面白くなる。その面白さを自分なりにどう伝えるか。まずは花を飾ることを習慣化してもらうことから始めよう」。そう考えて2021年3月に研究所をオープン。サブスクサービスも生まれました。

photo01 ワークショップも人気だそうです
 サブスク以外にも、花の楽しみ方を提案しています。研究所以外でも花を受け取れる場所「派出所」の設置、花のワークショップ、子どもから保護者に花を贈る「こどもおはなやさん」、研究員を対象とした「花屋の社会科見学」。アイデアを次々に形にしています。まだオープンから1年も経っていませんが、花を飾ることを習慣化して、喜んでくれる人が予想以上にいることを実感しました。「花で暮らしを豊かにするために、いろいろなチャレンジを続けたい」と話してくれました。
 ※【記者さんぽ|個店めぐり】は「あなたの静岡新聞」編集部の記者が、県内のがんばる個店、魅力的な個店を訪ねて、店主の思いを伝えます。随時掲載します。気軽に候補店の情報をお寄せください。自薦他薦を問いません。取材先選びの参考にさせていただきます。⇒投稿フォームはこちら

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