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社説(11月10日)サクラエビ秋漁 消費者第一 持続化の鍵

 駿河湾のサクラエビ秋漁が始まった。長引く不漁で価格が高止まりし、消費者離れが懸念される。新型コロナウイルス感染対策で冷え込んだ飲食店需要の回復も不透明だ。
 サクラエビ産業関係者は、消費者に昨今の価格が不可避な事情を理解してもらい、確かな信頼が得られるよう努めてほしい。
 初日の水揚げは3・5トンで前年の7割程度だったが、初競りは1ケース(15キロ)当たり平均約7万円と1割ほど安かった。不漁が深刻化して以降、秋漁初日の平均価格は19年が8万6千円、20年が7万6千円と年々下がっている。17年は4万円強だったので、今後の価格動向は予断を許さない。
 10年ほど前、相場が高騰し「バブル」と言われた時でさえ漁期を通じた平均価格は5万~6万円台だった。駿河湾産の高値は、台湾産の輸入急増の引き金になった。
 台湾は、駿河湾以外で唯一、商業的漁業が行われている。駿河湾産の資源回復が見通せない以上、台湾産との共存は持続可能なサクラエビ産業に不可欠だ。正しい表示など消費者第一の姿勢が鍵を握る。
 本紙連載「サクラエビ異変」の取材では、台湾産を使っているのに「駿河湾桜えび」、異種の小エビに着色して「駿河湾干しエビ」などと表示した商品が流通していることが分かった。
 県内のサクラエビ加工業者の組合連合会は昨年、駿河湾産であることを証明する統一認証ラベルを作成した。消費者の認知度など効果の検証とともに、流通・小売業者の協力も求めたい。
 サクラエビの生涯は1年数カ月。産卵期の夏は禁漁で、秋漁と春漁が行われる。漁期や出漁船数、漁獲量などは由比漁港、大井川港の全120隻の船主でつくる静岡県桜えび漁業組合で決める。出漁してもしなくても全員で水揚げ額を均等配分する「プール制」で運営されているため、漁の自主規制などは迅速な意思決定と対応が可能だ。
 秋漁で稚エビを、春漁で産卵前の親エビをできるだけ取らないことが資源管理の基本とされ、漁をする前に試験的に網を入れて稚エビや産卵前エビの多い群れの漁は見送っている。
 今年は、秋漁を前に県と実施してきた資源状況調査が悪天候で実施できず、操業しながら調査することになった。資源回復が最優先であることを再確認して臨んでほしい。
 サクラエビ不漁は、水産業のみならず、観光や地域の活気にも影を落とす。地域資源の持続化には消費者を巻き込む仕掛けが必要だ。県や漁業拠点がある静岡、焼津両市の政策課題である。

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