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富士市、被害情報集約システム導入検討 災害対応迅速化へ熟慮を【湧水】

 富士市は災害発生時に被害状況をいち早く把握するため、複数台の小型無人機「ドローン」を同時に使用するシステムの導入を検討している。現場からの中継映像を災害対策本部で即座に分析でき、本部での情報処理の労力削減や指示の迅速化が期待される。だが、システムの肝となる通信が停止した場合への備えが欠かせない。
 同市は災害用にドローンを持たず、民間2団体の機体が出動する態勢を構築する。市の要請を受けた操縦者が災害現場に接近してドローンを飛ばし、撮影された空撮映像を市職員が災害状況の把握や救助活動に必要な情報分析に役立てる。
 現在の運用では、映像は搭載した記録媒体に保存され、映像を見るにはドローンを回収して市役所内の対策本部まで持ち帰らなければならない。土砂崩れや大規模冠水被害が想定される市北部や東部から市役所への移動に長時間を要する恐れもある。
 市が検討する民間システムは各機体の映像が同時に中継され、対策本部の画面の地図上に反映されるため、記録媒体を運ぶ時間が省ける。飛行中に被害が見つかった場合、調査が必要な場所を対策本部から操縦者に直接指示できることも強みになる。
 さらに、映像と位置情報がひも付く利点がある。これまでは映像の位置情報から紙の地図に書き出す手作業で、被害の全貌が見えるまで時間がかかった。中継映像と同時にデジタルの地図に表示されるため状況把握が簡単になる。また、現地の担当者とも共有でき、安全確保につながるだろう。
 ただ、通信に携帯電話基地局の回線を使用するため、通信障害が起きた場合に機能が停止する懸念が残る。2019年の内閣府の試算によると、南海トラフ巨大地震で東海地方の基地局の最大8割が発災後、数日間停波する。その間も、現場と本部で時間差なく情報を共有できる予備手段が欠かせない。
 通信は、現場と本部をつなぐシステムの重要な役割を担う。この課題を克服し、未曽有の大規模被害でも機能するシステムを目指してほしい。
 (富士支局・国本啓志郎)

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