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水中ドローン港湾点検 事業化に期待【解説・主張しずおか】

 静岡商工会議所の外郭団体「新産業開発振興機構」(理事長・藤田綾子同商議所副会頭)が、水中ドローンを使って人手が足りない港湾設備などの点検作業を行う新ビジネスの創出を目指すプロジェクトを進めている。実験を通じてドローンによる点検の有効性を実証し、事業化につなげてほしい。

水中ドローンの構造などについて説明するフルデプスの関係者=9月下旬、静岡市清水区
水中ドローンの構造などについて説明するフルデプスの関係者=9月下旬、静岡市清水区


 同機構が9月、清水港の港湾設備の点検作業実験を本格的にスタートさせた。国土交通省の「海の次世代モビリティの利活用に関する実証事業」に採択され、交付された補助金約500万円を活用する。
 ドローン製造販売「フルデプス」(東京都)の遠隔操作型無人潜水機(ROV)と呼ばれる水中ドローンで、潜水士の作業の一部である目視検査や撮影を行う。撮影した画像や映像を、潜水士が陸上から確認し、有効性の判断や操作面の課題を抽出する。実験には同商議所のほか、ドローンを使った事業を手掛ける地元企業3社が参加する。
 同港を含む全国の港湾施設で老朽化が進む一方で、点検業務を担う潜水士の人材不足が課題になっている。ドローンの活用で、点検作業の負担軽減や効率化を図る。同商議所産業振興課の小堺昭宏課長は「港湾設備の他にも、船底やスクリュー、ダム設備点検への応用が考えられる。海中観察などレジャーにも活用できれば」と事業モデルを描く。
 事業化に向けて重要なのが、利用者の人材育成や機材コストを抑制するための運用体制の構築だ。
 ドローン導入の実証実験は、県内の農業現場や物資運搬を目指す中山間地でも行われているが、「ドローンの機材費など高額なコストなどを理由に、継続的な事業化に至っている例は少ない」(小堺課長)という。
 高価な機材では1千万円近くになるドローンの事業コストを抑えるため、複数の企業で共有、管理する体制づくりが求められる。
 最大の課題は、国土交通省が定める港湾整備のガイドラインに、水中ドローンが対応できるかどうかだ。
 清水港管理局企画整備課の深津幸宏課長代理は「企業や潜水士を含め、現場レベルでのドローン導入効果の見極めが重要になる」と期待する。
 実証実験は12月まで。水中ドローンによる効果を実証しながら、コスト面などの課題をクリアして新産業創出の契機にしてほしい。

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