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社説(10月25日)参院補選野党勝利 自民には深刻な結果だ

 衆院選の前哨戦として注目された参院静岡選挙区の補欠選挙は、無所属新人の元県議で立憲民主党と国民民主党が推薦する山崎真之輔氏(40)が、自民党新人で公明党が推薦する元御殿場市長と共産党新人を破った。
 岸田文雄政権が発足して初の国政選挙で、政権信任の意味合いもあった。新政権の出ばなをくじく形で山崎氏が勝利したことで、野党側が勢いづくのは間違いない。自民の痛手は大きく、結果を深刻に受け止める必要がある。
 静岡補選は6月の県知事選に出馬した自民参院議員の辞職に伴い行われた。山崎氏は川勝平太氏が大勝した知事選で川勝氏の政策担当を務め、川勝氏も応援に立った。「知事選の続き」を強調してうねりを巻き起こし、急速に支持を拡大した。
 野党は候補者の一本化はならなかったが、最終盤には立民の枝野幸男代表、国民の玉木雄一郎代表、連合の芳野友子会長が“そろい踏み”し、山崎氏への支持を訴えた。
 自民にとって参院静岡選挙区は長年、野党と議席を分け合う「指定席」。しかも今回は岸田首相の初陣。「絶対負けられない選挙」と位置づけ、岸田首相はじめ「党の顔」が駆け付け強力な組織戦を展開した。
 だが、新政権が「成長と分配」の道筋や安倍・菅政権の「負の遺産」への対応を明確に示さなかったことへの不信感なども響き、山崎氏の勢いを食い止めることができなかった。共産新人は党勢拡大も意識した戦いだった。
 選挙期間が衆院選と重なり、論戦の高まりに相乗効果もあったのではないか。新型コロナが大きな影を落とす中、補選で論じられた感染防止策や医療体制の拡充、経済対策をはじめとする出口戦略は、国を挙げた喫緊の課題であり、衆院選でも争点の核心だ。有権者は深まった認識を、31日に投開票日を迎える衆院選での判断に生かしたい。
 当選した山崎氏は、党利党略に左右されない「良識の府」の一員として、長期的な視点で負託に応えなくてはならない。県議や市議の経験を生かし、特に東京一極集中の是正と地方の活性化に力を入れてもらいたい。
 衆院選では立民と共産などの野党共闘が進み、全国の210超の小選挙区で候補者の一本化が実現した。自民は戦いが厳しさを増す中、自分たちの訴えがなぜ浸透せず支持が拡大しなかったのか、謙虚に顧みなければならない。
 投票率は45・57%で、2019年の参院選静岡選挙区の50・46%を下回った。衆院選では日本の針路を見据え、1票の権利を行使してほしい。

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