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♪アミュージアム♪ 店中に楽しい「仕掛け」 文具店オオイシ(静岡市葵区)【記者さんぽ|個店めぐり】

JR静岡駅北口の紺屋町名店街を歩くたび、店先に並ぶ小物類、目を引くディスプレーが気になっていました。文具店「オオイシ」。いつも何かに急いでいて、入ることはなかった店内に初めて足を踏み入れてみました。すぐに思いました。「変わってる…面白そう」と。

店内に、トリックアートの写真撮影スポットが
店内に、トリックアートの写真撮影スポットが

ショーウインドーからはレーザービームが放たれています。商品棚の上からは文具を組み合わせた特製のロボットがしゃべっています。床には穴に落ちたり高い所に立ったりしているように見える「トリックアート」の写真撮影スポットも用意されています。
photo01 小ネタの書かれた黄色いカード
店内のあちこちに黄色いカードが貼られています。これがまた、面白い。「もしもホワイトボードに油性ペンで書いてしまったら→ホワイトボードマーカーでなぞってみて」(※実際にこの方法で消せるんですって!)「松崎しげる氏の肌の色の絵具がサクラクレパスから販売されたことがある」(※これもホント、まつざきしげるいろ!)ー。8センチ四方の紙いっぱいに、文具の豆知識や雑学を紹介しています。
photo01 店主の大石さん。写真からもユニークな人柄が伝わってきます
店主の大石康弘さん(55)に話を聞きました。コンセプトは、アミューズメント(娯楽)とミュージアム(博物館)を掛け合わせた造語「アミュージアム」。インターネットで便利に買い物ができる時代にあっても足を運びたくなる実店舗をつくろうと、店内にさまざまな仕掛けを散りばめたということです。
photo01 黄色いカードを見入ってしまう人も多い
過去には大道芸見物のついでで寄ったのに、店内のカードにひかれて4時間も滞在した観光客もいたのだとか。文具メーカーの営業マンが「こんなお店は珍しい」と、とっておきの豆知識を提供してくれたり、来店した子どもが小ネタを提供してくれたり。そんな周囲の応援もあり、カードはいまや約200枚まで増えました。

「きょうの合言葉は〇〇〇〇です」。合言葉を書いたカードも見掛けました。会計時にレジで店員に告げると、購入金額によっては何か(※内緒にしておきます)がもらえるそうですよ。
photo01 床に答えが書かれていますが…
大石さんは「『他の店舗とは違うことをやる』という姿勢で、オリジナル商品の企画販売にも力を入れている」と胸を張ります。2000年にミカン形ポストカードを製作して以来、これまでに10アイテムの独自商品を開発しています。イチゴの香りの鉛筆、富士山形のティッシュカバーなど、静岡愛が色濃い商品が目出ちます。文具以外の業種での協力企業探しでは、断られることもありましたが、「お客様の静岡の思い出になる物を扱いたい」(大石さん)という思いから粘り強く交渉しました。
photo01 店舗の外観
オオイシの創業は1865年(慶応元年)。6代目として店のかじ取りを担ってからの経営を取り巻く環境は、社会の変化に見舞われ終始厳しいままです。総務省などの経済センサスによると、2016年の「紙・文房具小売業」は7157店。ここ20年ほどで約3分の1にまで減っています。

photo01 文具ロボット。いろいろしゃべります
大石さんは「どんなにITが進化しても、利用するのは人。人をハッピーにするリアル店舗を人の力でつくりたい」と言葉に力を込めます。

※【記者さんぽ|個店めぐり】は「あなたの静岡新聞」編集部の記者が、県内のがんばる個店、魅力的な個店を訪ねて、店主の思いを伝えます。随時掲載します。気軽に候補店の情報をお寄せください。自薦他薦を問いません。取材先選びの参考にさせていただきます。⇒投稿フォームはこちら

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