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「Beパレットふじ」が始動 民間の強み、発信力生かせ【湧水】

 中小企業支援の相談窓口を担う富士市地域産業支援センター「Beパレットふじ」が9月に始動した。全国的に有名だった前身の「f―Biz(エフビズ)」が事業休止してから1年余り。コロナ禍にあえぐ地元企業には待望の再始動だ。企業の本質的な課題の解決とともに、事業者の利益に直結する情報発信の強化を求めたい。
 エフビズは12年余りの間、企業の経営改善や起業支援で実績を上げてきたが、昨春、判明した国の専門家派遣事業での不正受給問題を巡り、責任を取る形で事業を休止した。
 市中小企業等振興会議に設けた専門部会による事業検証では、絶大な知名度を誇るセンター長の下、市の統治が及ばない運営など長期民間委託の弊害や、製造業の支援実績の少なさが指摘された。
 新センターは、同市の基幹産業である工業分野の支援やDX、IT導入支援などを強化する。センター長に市職員を据え、民間委託する相談業務は製造業に強い専門家を配置した。地域経済団体との連携も図る。成果指標を相談件数ではなく、支援企業の売り上げとする気概に期待は高まる。
 エフビズは、専門性のある民間企業が公的支援機関を担う全国初の事業で、「ビズモデル」は全国に波及し、地方創生の切り札と脚光を浴びた。ただ、地元では、高い評価と痛烈な批判に二分され、市議会や既存団体との軋轢(あつれき)が顕在化しつつある中での問題発覚だった。
 手法の賛否は別にして、記者が感じるエフビズの強みは、民間ならではの迅速な対応やマスコミを動かす巧みな発信力だった。
 発表資料には、新商品やサービスの背景にある社会課題、会社の物語など付加価値が詰まり、何よりタイムリーだった。時に強引なこじつけや、やらせまがいとも感じる取材対応に危うさもあったが、PRに手が回らない支援先企業の多くに喜ばれていた。
 エフビズ不在の1年余り。特定企業を優遇できない行政や、既存の経済団体、金融機関から支援企業の発信はほとんど無かった。エフビスの反省と継承を目指す新センターに、情報発信の戦略が備わっているか心配している。SNS全盛の中、発信の手法は企業支援の要になりうる。コロナ禍だからこそ、迅速かつ丁寧な情報発信が必要とされているはずだ。
 

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