特集 : 函南町

社説(9月25日)日本遺産に評価制 認定継続へ物語を磨け

 多数の文化財を物語で結び、観光資源として積極活用する文化庁の「日本遺産」に本年度、評価制度が導入され、2015年の認定第1陣18件のうち4件が認定取り消しもあり得る「再審査」となった。一方、4件は「重点支援地域」に格上げされ、新たに3件が候補になった。
 東京五輪に向け100件を目標にスタートした日本遺産認定は現在、104件。期待した交流人口増は新型コロナウイルス感染拡大に阻まれたが、コロナ収束後の観光立国推進の再スタートに備えなければならない。
 日本遺産の認定件数を増やさず、いわば入れ替えによって創意工夫を促す仕組みは合理的だ。各地の独創性と切磋琢磨[せっさたくま]に注目したい。
 静岡県内は、18年に三島市、函南町と神奈川県箱根町、小田原市の「箱根八里」(構成文化財24件)、20年に藤枝、静岡両市の「弥次さん喜多さん、駿州の旅」(同33件)が認定された。評価制度をよく研究した上で、物語を磨き上げ、認定継続に備えてほしい。
 どちらも、江戸時代の旅を物語のテーマにした。観光資源化には、訪れた人がただ歩くだけでなく、当地の歴史文化を探訪し、そこで暮らす人たちと交流する仕掛けが求められよう。新たなページを足せる人づくりとともに、地域住民の理解と参画が必要だ。
 認定による補助金に依存しすぎず、観光産業として持続可能な自立戦略が求められる。それには、官民の役割分担と、若手を中心に民間のネットワークづくりが欠かせない。
 旅がテーマなのだから、当時の往来を彷彿[ほうふつ]とさせる演出が求められる。訪れた人に街道のにぎわいを追体験してもらうにはどうするか、知恵を出し合いたい。歩きやすい道路整備や景観形成、探究心を喚起するガイド養成、子供たちの学習機会創出など、市町には庁内横断的な取り組みが求められる。
 「駿州の旅」2峠8宿の地元ではそれぞれ、これまでも歴史学習会やイベントなどが行われてきた。日本遺産を機に、蒲原地区の児童が蒲原宿の学習成果を携えて岡部の大旅籠[おおはたご]柏屋[かしばや]を訪ねて学びを深めるなど、新たな動きも生まれている。外から招き入れる戦略と、エリア内の交流活性化を図る取り組みが車の両輪となれば効果的だ。
 藤枝、静岡両市の旧東海道は駿河路の一部でしかなく、大井川の川越しが入っていないのは物足りなさを禁じ得ない。日本遺産の評価項目は組織や戦略、人材など多岐にわたる。島田市との連携強化は認定継続へのアピールポイントになるのではないか。何より、訪れる人たちのためになる。

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