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♨温泉の自販機!? 伊豆市原保地区、噂の現場を訪ねてみました

 新型コロナウイルスの感染拡大により、非対面の販売方法として改めて注目されている「自動販売機(自販機)」。伊豆市に「変わった温泉の自販機がある」という噂(うわさ)を聞いて、現場を訪ねてみた。先日の「​クラウンメロンが当たる!? 袋井で噂の自販機、訪ねてみました」に続く自販機シリーズ第2弾。

温泉の自販機。黄色一色の缶が4本並ぶ
温泉の自販機。黄色一色の缶が4本並ぶ
自販機の使い方を再現する原保温泉協議会のメンバー
自販機の使い方を再現する原保温泉協議会のメンバー
温泉自販機の常連客。軽トラックに積んだ大型タンクに、お湯をそそぐ(※屋外で距離を取って撮影)
温泉自販機の常連客。軽トラックに積んだ大型タンクに、お湯をそそぐ(※屋外で距離を取って撮影)
横にあるジュースの自販機のように、缶が出てくるわけではない。注意が必要
横にあるジュースの自販機のように、缶が出てくるわけではない。注意が必要
温泉の自販機。黄色一色の缶が4本並ぶ
自販機の使い方を再現する原保温泉協議会のメンバー
温泉自販機の常連客。軽トラックに積んだ大型タンクに、お湯をそそぐ(※屋外で距離を取って撮影)
横にあるジュースの自販機のように、缶が出てくるわけではない。注意が必要

 伊豆箱根鉄道・修善寺駅から車で20分。伊豆市原保(わらぼ)地区で「お肌すべすべ 原保温泉 美人の湯」と書かれた手書きの看板を見つけた。そばの四阿(あずまや)には自販機が2台。1台は、よくある飲み物の自販機。もう1台は、ちょっと見慣れない自販機で、黄色の缶が4本並んでいた。缶にはそれぞれ「♨18L ¥100」「♨200L ¥250」「♨300L ¥300」「♨500L ¥450」と書かれたシールが貼ってあった。
 どうやって使うのか。不思議に思っていると、利用客が訪れた。隔日で15分かけて伊豆市加殿から訪れるというホテル従業員の仁科雅之さん(74)に購入する様子を見せてもらった。
 仁科さんは容量数百リットルの大きなタンクを積んだ軽トラックを自販機に横付け。「200L」ボタンを押すと間もなく、自販機脇のホースからお湯が勢いよく流れ出てきた。タンクの口にホースを入れ、後は数分待つのみ。「普通の水道水とは違う。肌がすべすべする。修善寺あたりから来ている人も多いよ」と魅力を語ってくれた。自宅に着いたら専用のポンプを使い、車に乗せたままのタンクと浴槽をホースでつないで湯を入れるのだそうだ。
 自販機から西へ約200メートルの位置にある源泉からお湯を引いている。源泉は24.5度と冷たいため、自販機裏のボイラーで60度に温めて販売しているという。pH9.07のアルカリ性単純温泉で、無色透明、無味無臭。
 原保地区は温泉を自宅に引いている家が多い。そのため、自販機の利用者は主に周辺地域の住民で、毎月1000件ほどの利用がある。取材中の昼の1時間の間にも、大きなタンクを積んだ軽トラックが3台訪れた。毎日夕方にはトラック数台が行列をつくるという。
 温泉が有名な伊豆半島。昭和60年頃、地域おこしの一貫として原保の有志が温泉掘削を計画。調査ヘリを飛ばして目星をつけると、地元の80軒ほどが計画に協力した。原保温泉協議会の古参メンバー海老名明さん(75)は「温泉が出る確証はなかった。賭けだったが、ロマンがあって。よく地域がまとまったものだと思う」と当時を懐かしむ。掘削工事は平成元年に完了。当時は源泉のそばに露天風呂も設けていた(現在は廃止)。
 自販機の設置は平成10年。協議会のメンバーに元自販機業者の人がいて「活用できるのでは」と、温泉自販機が生まれたそうだ。タイマーを組み込み改造されていて、ボタンに応じて湯の流れ出る時間が決まっている。伊豆市観光協会中伊豆支部の石井孝明事務局長(65)によると、隣に飲み物の自販機があるため、同じように缶入りの温泉が出ると思い込んでボタンを押して、ホースからのお湯でびしょ濡れになった人もいるらしい。利用時には注意が必要だ。

 〈記者メモ〉ホームセンターで20リットルのタンクを購入。昼に買った温泉18リットルを静岡市内の自宅に持ち帰って夕方、足湯を楽しみました。まだ温かかったです。自販機の近くには万城の滝やキャンプ場もあります。
 

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