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テーマ : 熱海市

一部被災者、損害賠償請求を検討 盛り土巡り、行政と土地所有者に 熱海土石流1カ月

 熱海市伊豆山で起きた大規模土石流は3日で発生から1カ月を迎えた。犠牲者は22人を数え、依然5人が行方不明。懸命な捜索は土砂やがれきを撤去しながら行われているが、生活再建の見通しは立たない。被災者らは2日、市内で記者会見を開き、土石流被害を拡大させたとされる盛り土を巡り、市や県、盛り土をした当時の土地所有者と現在の所有者に対し、損害賠償請求を検討していることを明らかにした。

土石流の原因究明と責任追及の必要性を訴える被災者=2日午前、熱海市内
土石流の原因究明と責任追及の必要性を訴える被災者=2日午前、熱海市内
大量の土砂やがれきの撤去作業が進められる被災現場。行方不明者の捜索も続く=2日午後、熱海市伊豆山
大量の土砂やがれきの撤去作業が進められる被災現場。行方不明者の捜索も続く=2日午後、熱海市伊豆山
土石流の原因究明と責任追及の必要性を訴える被災者=2日午前、熱海市内
大量の土砂やがれきの撤去作業が進められる被災現場。行方不明者の捜索も続く=2日午後、熱海市伊豆山

 記者会見には、避難所の市内ホテルに身を寄せている9人が出席した。被害者団体の組織化を目指し、近く弁護士を交えた対応を協議する方針という。土石流で自宅を失った太田滋さん(64)は「(行政と土地所有者の)不作為の積み重ねが今回の事態に至った」と訴え、責任追及する姿勢を示した。
 市や消防によると、捜索エリアの周辺を含めた土砂やがれきの完全撤去は少なくとも2~3カ月かかる見込みで、宅地の原状回復はさらにその先になるとみられる。
 斉藤栄市長は同日の記者会見で、国や県が進める土石流の原因究明や行政手続きの検証に全面的に協力するとし、「現時点では過去の事実関係を整理している」と述べた。被災者らの損害賠償請求の動きについては、「重く受け止めている。仮にそうなった時は冷静に対応したい」との認識を示した。
 消防本県隊と法務省特別機動警備隊は3日正午で撤退し、捜索態勢は約150人減少する。2日は行方不明者の新たな発見はなかった。

 ■「人災」被災者怒り 盛り土、行政の黙認糾弾
 「なぜこんなことになったのか。それが解明されないと前に進めない」―。熱海市伊豆山の大規模土石流で自宅を失うなどした被災者らが2日に市内で開いた記者会見。今も避難生活を余儀なくされ、自宅があった場所に立ち入ることさえできない被災者は、今回の土石流を行政や土地所有者による「人災」と訴え、悔しさや怒りをあらわにした。
 土石流被害を拡大させたとされる盛り土に関し、地元では10年ほど前から危険視する声があり、市に対策を求める住民もいた。市や県は盛り土をした神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)に行政指導をしたが改善されなかった。現在の土地所有者に変わってからも、土砂が搬入されるところを多数の住民が目撃している。
 土石流により自宅が全壊した田中均さん(64)は「黙認してきた県や市に憤りを感じる。もっと早く対応していれば人災は起きなかった」と悔しさをにじませた。
 市は7月29~31日、被災者の生活再建に関する説明会を開いた。参加者によると、避難者が身を寄せている市内ホテルで行われた説明会では、土石流の原因究明や盛り土の経緯説明を求める声が相次いだ。説明会には斉藤栄市長も出席していたが、具体的な説明はなかったという。被災者の太田滋さん(64)は「分かったことを段階的にでも公表してほしいが、次回の説明会の予定も示さなかった」と不信感を口にした。
 2日現在、土石流による犠牲者は22人。依然として5人の行方が分かっていない。家屋などの財産的被害も計り知れない。記者会見に参加した被災者の女性は「日常の全てが流された。それが誰かの責任ならば、謝ってほしい」と切実に訴えた。

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