社説(7月23日) 狩野川資料館一新 防災意識高める拠点に

 狩野川台風(1958年)という歴史的災害を後世に伝えるとともに、河川・砂防事業の重要性を啓発する施設である狩野川資料館(伊豆の国市)がリニューアルした。近年の豪雨災害の激甚化などを踏まえ、住民自らが自然災害への備えを意識する拠点として活用し、減災につなげたい。
 狩野川資料館は国土交通省沼津河川国道事務所が98年に開設した。狩野川台風の被害とそれを踏まえて整備された狩野川放水路の工事の記録や役割などを知ることができる。流域の小中学生、住民は隣接する放水路を見学し、施設内の資料を通じて防災を学ぶ。同事務所職員が教室を開いたり、狩野川台風体験者から話を聞いたりする機会も提供する。来館者は累計約2万2600人、年間約千人が利用した計算になる。今回の一新を、利用者層をさらに広げ、継続的な学びの場にするきっかけとしたい。
 災害から命や生活を守るには災害を自分ごとと捉え適切な行動につなげることが大切で、幼い頃から災害への心構えや知識を学ぶことが効果的だ。身近な狩野川は格好の題材になる。
 2019年10月に静岡県に上陸した台風19号は、狩野川台風に匹敵すると警戒が呼び掛けられ、流域の広範囲に浸水被害が発生した。今年も7月1日からの大雨が県東部に被害をもたらした。熱海市伊豆山では大規模土石流が発生し、行方不明者の捜索活動が今も続く。沼津市や富士市などでも浸水被害が相次いだ。狩野川水系の黄瀬川は沼津市の愛鷹雨量観測所で最大時間降水量75ミリとなり、長泉町本宿で過去最大に迫る水位を記録。黄瀬川大橋の崩落や住宅の流失などに見舞われた。
 災害の頻発が懸念される現代にあって、身近な水害を学ぶ拠点として資料館の存在意義が問われよう。
 今回の一新に合わせてタブレット端末を導入し、説明パネルと映像を連動させたり、浸水のバーチャル体験ができるようになった。19年の台風19号の浸水被害などが分かる映像も用意した。今回の大雨も黄瀬川の水位上昇の状況を映像で伝え、防災教育に生かせるよう準備するという。
 これまでに整備した映像資料には狩野川台風を体験した語り部のインタビューがある。当時の被害や恐ろしさを生々しく伝える。台風から60年余りが経過し、体験者の高齢化が進んで記憶の継承は年々難しくなっている。こうした映像資料の充実を迅速に進めてほしい。狩野川資料館は語り部の記憶を貴重な財産として次世代に受け継ぐ役割も担わなければならない。

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