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ベアードブルーイング(伊豆市)大川英紀さん 日本酒業界から転身、醸造の楽しさを満喫【しずおかクラフトビール新世代⑭】

 琉球大でコウモリの研究に没頭し、卒業後は関西の三つの酒蔵で日本酒づくりにいそしんだ大川英紀さん(38)は5年前の7月、狩野川沿いにあるベアードブルーイング(伊豆市)の門をたたいた。見知らぬ土地。知り合いはいない。ビールづくりへの情熱だけを携えてやってきた。

タンクからビールを取り出す大川英紀さん=6月中旬、伊豆市のベアードブルーイング
タンクからビールを取り出す大川英紀さん=6月中旬、伊豆市のベアードブルーイング
ライジングサンペールエール(左) ホップハボックインペリアルペールエール
ライジングサンペールエール(左) ホップハボックインペリアルペールエール
タンクからビールを取り出す大川英紀さん=6月中旬、伊豆市のベアードブルーイング
ライジングサンペールエール(左) ホップハボックインペリアルペールエール

 同社のオーナー、ブライアン・ベアードさん(54)=米国出身=は、沼津市で2001年に自家製ビールの提供を始め、同社を国内屈指のクラフトビールメーカーに押し上げた立志伝中の人。大川さんは「ビールを好きでたまらない人が、会社までつくってしまった。ビール、酒が心底好きな人が集まる場所で働けると思った」と語る。
 転身前は京都市の老舗、玉乃光酒造で働いていた。洗米、こうじづくり、もろみの搾り作業-。10年間の酒づくりの経験を通じて伝統産業に身を置く充実感を味わった。一方で、2010年ごろから、クラフトビールに引かれるようになった。市内のビアバーや酒販店で「ベアード」の名を知ったのもこの頃だ。
 「米、米こうじ、水だけを使う日本酒の目指す所は『洗練』の1点。ビールは、原料や副原料の組み合わせで無数のスタイルが生まれる」。日本酒が原料や手法を磨いて、そぎ落とす文化なら、ビールは付け加える文化。複数のホップやモルトを操り、季節の果実やスパイスも用いる。「長く仕事をしていく上で、自由さを楽しんでみたい」という気持ちが募った。
 ビールの醸造所は酒蔵とは何もかも違っていた。「仕込みから瓶詰めまで、タンク一つ分を自分の責任で仕上げるが、他のブルワーの手伝いもする。短期間にさまざまな作業がある」。秋から春までの仕込み期間中、任された作業を丁寧に繰り返し行う日本酒とは対照的だった。
 定番12種のほか、月ごと、四季ごとに異なるビールを送り出す。今年は発表の日付が決まっているだけで約40種。醸造所の敷地内で収穫した果実も積極的に取り入れる。
 「純粋にビールづくりを楽しみたい」が将来の展望。「一日一日を楽しむ。その結果できた製品が、購入してくれた方の楽しみにつながる」
 (文化生活部・橋爪充)

 ■ライジングサンペールエール
 ■ホップハボックインペリアルペールエール

 「ライジングサンペールエール」は醸造所の代名詞的存在。現役醸造家を含め、多くの人をクラフトビールの世界へ導いた。米国北西部産の生ホップを使用。ホップを入れて発酵させた麦汁に再度ホップで香り付けをする手法「ドライホッピング」を行っている。かんきつ系の清涼感あふれる香りと、ホップの苦み、モルトの甘みのバランスに優れる。
 「ホップハボックインペリアルペールエール」は、米国やニュージーランドのホップ6種を使い、ドライホッピングを3回行っている。複雑で力強いホップの個性を楽しめる。

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