クラフトビール組合設立 多彩な味、地域の魅力に【解説・主張しずおか】

 クラフトビールの一大産地になっている静岡県東部の製造業者など6社が5月下旬、共同で原材料の仕入れや商品の販売に取り組む協同組合を設立した。クラフトビール専門の組合は県内初で全国的にも珍しい。各社の独自色があふれるビールは観光資源となる。経営の安定化だけでなく、多彩なビールが楽しめる地域という魅力発信に努めてほしい。

静岡県東部のクラフトビール製造業者などでつくる協同組合の設立総会=5月下旬、沼津市内
静岡県東部のクラフトビール製造業者などでつくる協同組合の設立総会=5月下旬、沼津市内

 消費者の嗜好(しこう)の多様化に伴い、クラフトビールの人気は高まっている。一方で、大手メーカーの参入が相次ぎ、競争が激化。さらに、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外食の自粛ムードで、飲食店向けの出荷が激減した。観光需要も低迷し、各社は厳しい経営環境に置かれている。輸送などのコストも上昇しているという。
 組合設立の狙いの一つは、こうしたコストの削減にある。モルト、ポップなどの原材料や瓶を共同購入することで、仕入れ価格の引き下げを図る。各社の商品を共同保管し、主要市場の首都圏などに一括配送できる仕組みも整えるという。
 新たな収益の確保も図る。今後、各社のビールやグッズを販売するホームページを開設し、「巣ごもり消費」の取り込みを狙う。製造過程で出るモルトかすを、組合が集めて飼料として販売することで収益化していく。イベントも開催し、消費拡大につなげる。
 仕入れや輸送などの事務負担が軽減されれば、今以上に各社が商品開発に注力できるようになる。小規模で小回りが利くからこそ、自社のこだわりを表現したり、その時々の流行を反映したりと、魅力的なビールをどんどん生み出してほしい。
 7月にも正式に法人化手続きが完了する見通し。代表理事に就いた柿田川ブリューイング(沼津市)の片岡哲也社長は「クラフトビール市場は今後も拡大する。競争もあるが、市場を一緒に開拓する仲間を集めていく」として、既存業者の加入を促す。意欲のある若手らの新規参入も後押しする考えも抱く。
 業界の発展にとどまらず、地域活性化への貢献も期待したい。片岡社長は県東部のかんきつ類を使った商品の開発や、地元産の農水産物を使った料理とのコラボレーションの構想を描く。各種団体や飲食店と連携すれば、互いの魅力を発信できるだけでなく、豊富な食材を持つ本県のPRにもつながるはずだ。
 (東部総局・八木敬介)

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