エシカル消費普及へ 障害者手作り品 ブランド化に力

 人や社会、環境に配慮して作られた商品やサービスを購入する「エシカル(倫理的)消費」への関心が高まっている。途上国や全国の障害者施設と協働したものづくりを通じて「エシカル」の考え方を発信する静岡市の女性の取り組みや、施設側の思いを紹介する。

エシカル商品の開発を手掛ける久保田優さん(左)。施設に足を運び、支援員や作り手と意見交換する=2月下旬、静岡市葵区のラポール安倍川みろく
エシカル商品の開発を手掛ける久保田優さん(左)。施設に足を運び、支援員や作り手と意見交換する=2月下旬、静岡市葵区のラポール安倍川みろく
機織り機でポーチ用の布を織る通所者=2月下旬、静岡市葵区のラポール安倍川みろく
機織り機でポーチ用の布を織る通所者=2月下旬、静岡市葵区のラポール安倍川みろく
織った布が使用されたポーチ
織った布が使用されたポーチ
ライクの通所者が手掛けたニットの小物
ライクの通所者が手掛けたニットの小物
エシカル商品の開発を手掛ける久保田優さん(左)。施設に足を運び、支援員や作り手と意見交換する=2月下旬、静岡市葵区のラポール安倍川みろく
機織り機でポーチ用の布を織る通所者=2月下旬、静岡市葵区のラポール安倍川みろく
織った布が使用されたポーチ
ライクの通所者が手掛けたニットの小物

 (大滝麻衣)

 ■静岡「スリーパンズ」の久保田さん 施設と協働
 静岡市葵区の久保田優さん(34)はエシカル商品の開発、販売を手掛ける会社「スリーパンズ」を2015年に起業した。ネパールの陶器工房が作った食器の取り扱いからスタートし、現在は全国の障害者支援施設が製造する手工芸品のブランド化に力を入れる。エシカル消費を「優しさを基準にしたもの選び」と表現し、その考え方を、オリジナル製品を通して発信する。
 大学時代、留学したイギリスでエシカル消費の考え方に触れ、関心を持った。帰国後は、途上国の製品を適正価格で取引する「フェアトレード」を推進しようと学生団体を立ち上げ、単身でフィリピンやネパールなどにも足を運んだ。
 起業して最初に企画したのは、婚礼ギフト向けのネパール製の陶器マグカップ。「国内ではイギリスなど海外に比べ、ギフトになるフェアトレード商品が身近にあまりないと感じていた。途上国の伝統、技術を生かした魅力的な商品を生み出したかった」と振り返る。
 久保田さんは起業当時、生活のために障害者施設でアルバイトし、授産品を作る障害者をサポートしていた。その中で「授産品を作る施設には、途上国のものづくり現場と共通する課題がある」と感じた。「設備や積み重ねた技術はある。一方、売れるデザインや販路についてノウハウがない」。フェアトレードの取り組みが生かせると考え16年、障害者施設の製品のブランド化に乗り出した。
 連携する障害者施設は、県内22施設を含む全国約100カ所。新たな商品を一緒に開発したり、既存の製品にアドバイスしたりしている。取り扱う製品は花器や食器、手織りや手編みの小物、化粧品など幅広い。
 多くの人に手に取ってもらえるようにと考えたデザインに則して製造してもらうのも大切にする一方、「作る人たちの個性や、それぞれのペースも尊重した製品にしたい」。できる限り施設に出向いて生産現場の声を聞き、無理のないデザイン、発注内容になるよう心掛ける。
 販売は県内や関東の百貨店の催事などが中心で、今後ウェブサイトでも展開する予定。「あくまでも品質、デザインを評価してもらえる製品を作っている」と久保田さん。その上で、「製品が作られた背景や、エシカル消費を知ってもらえたら」と話す。
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 スリーパンズは11日まで、静岡市葵区の静岡パルコ1階で催事を開いている。

 ■静岡の福祉サービス事業所 プロとして責任
 静岡市葵区の障害福祉サービス事業所「ラポール安倍川みろく」は昨年9月から、エシカルブランド「スリーパンズ」(久保田優代表)の製品作りに参画している。30年ほど前から、知的障害がある人などが布を手織りし、小物として販売してきた。イベントで同施設の作品を見た久保田さんが丁寧な仕事ぶりに感銘を受け、協働を依頼した。
 担当するのは、ポーチ用の布の製造。廃棄物を活用して新たな価値を生み出す「アップサイクル」の考えも取り入れた製品で、アパレル工場の残糸を横糸に活用する。細いラメ糸を織り込む初挑戦の作業などに苦労するが、通所者も職員も「新しい技術を積むことができる」と前向きに捉える。支援員の石部陽子さんは「機織りのプロとして責任を持って仕事に取り組むことは通所者の刺激になる。今まで小物は身近な人に使ってもらう機会が多かったが、遠くの人の手にも渡るのは大きな喜び」と語った。
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 静岡市清水区の障害福祉サービス事業所「ライク」がスリーパンズと手掛けるのは、家庭用編み機で編んだニットの帽子やマフラー。風合い豊かな縄編みの模様などが特徴で、2017年から続く冬の定番商品。通所者15人のうち、熟練の3人が担当する。
 同施設では近年、別のアパレルブランドの仕事も請け負う。ニット指導を担当する増田升美さんは「今後も技術力が認められた仕事が増え、通所者の生きがいや工賃アップにもつながっていけば」と期待した。

 ■エシカル消費とは エコ商品や被災地産品購入も
 消費者庁の「倫理的消費」調査研究会は、エシカル消費の具体例として、障害者支援につながる商品▽フェアトレード商品▽エコ商品▽地産地消、被災地産品―などの購入を挙げる。環境や人権、貧困など社会的課題の解決を意識したり、課題に取り組む事業者を応援したりしながら商品、サービスを選択する行動をエシカル消費と呼ぶ。
 普段、商品やサービスを選ぶ時には「安全・安心」「品質」「価格」といった尺度があり、「エシカル」は“第四の尺度”とも位置づけられている。
 国際社会が2030年までに達成を目指す「持続可能な開発目標」(SDGs)。エシカル消費は、12番目の目標「つくる責任つかう責任」と関連が深く、新たな消費行動として注目されている。

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