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テーマ : 教育・子育て

今野弘之学長ロングインタビュー「資源の臨機応変な活用が重要に」【浜松医科大の半世紀④完】

 開学50周年を迎えた浜松医科大の今野弘之学長(71)は静岡新聞社のインタビューに応じ、今後の地域医療の体制について、人口減少時代を迎えて医療の人的、物的資源の臨機応変な配置が重要になると指摘した。静岡大との統合・再編については、機動力、意思決定の迅速化など1法人2大学の形による再編のメリットを改めて強調し、早期実現に期待を寄せた。

開学50周年を迎えての思いを語る浜松医科大の今野弘之学長=5日午前、浜松市中央区の同大(浜松総局・山川侑哉)
開学50周年を迎えての思いを語る浜松医科大の今野弘之学長=5日午前、浜松市中央区の同大(浜松総局・山川侑哉)


 ―開学50周年の所感は。
 「歴代の学長や病院長、理事、教職員や学生といったみんなで大学をもり立てて50周年を迎えられ、感謝している。生成AIなど技術の進展は驚異的で、50年後は予測が付かない。(人口減少、高齢化が進展する中で)人的、物的アセットを臨機応変に活用することが重要になる」

 ―地域医療の課題は。
 「静岡県は医師少数県だと言われるが、数の問題ではなく地域による偏在や、外科などハードな部門は医師が少ないといった診療科ごとの偏在をどうするかだ。今までは医師のみが行えた医療行為を看護師が行えるようにする制度が徐々に広がる。こうした制度をめぐっては本学でも医療部門と看護部門が連携を強化している。難易度の高い手術を行う診療科を集約することも必要だ。どの地域にどの診療科、どういう専門医が適しているのかの調査も行うべきだ」

 ―アントレプレナーシップ(起業家精神)の教育にも力を入れている。
 「(起業家の講義を受ける医学概論など)カリキュラムに取り入れている。医師、看護師も『こんな機器があれば患者のためになる』と思えば作ってみるべきで、本学の付属病院医師らによる器具開発が特許につながった事例もある。医療現場の改善でも医療用アプリの作成でもいい。若い人の方がこうした発想は豊かなはず」

 ―静岡大との運営法人統合・大学再編の議論が停滞している。
 「再編するということ自体がきちんと議論されていない。1法人2大学での再編は機動力、意思決定の早さの点でメリットがある。産学官連携も拠点がそれぞれあることで、知財戦略などが企画段階からも進められるようになるなど事業を迅速に行えるようになる。統合・再編が進むことを希望する」

 ―大学再編に関し、鈴木康友新知事への期待は。
 「浜松市長の時には(1法人2大学での再編を求める浜松市や周辺自治体、経済界などでつくる)期成同盟会を発足された。現在も本学の顧問を務めていただいている。市長時代と知事の現在で立場が違うのは承知しているが、理解がある方なので、新知事の下で再編を望む」

 ―働き方改革関連法に基づく時間外・休日労働の上限規制が2024年度から病院勤務医にも導入されたが、どう考えるか。
 「ワークライフバランスの充実へ改革は重要だ。ただ、23年度末時点でも、24年度からの(浜松医大付属病院などに適用される)年960時間超の時間外労働を行っていた医師は病院全体の11%に当たる23人のみで、解消は十分可能だ。2年ほど前から勤務時間の把握を徹底するようにし、病院長や各教授も長時間勤務の是正に理解を示している」

 ―国立大学の学費値上げをすべきとの提言が上がり、是非を巡る議論が行われている。
 「国立大学の授業料値上げをすべきとの議論は過去にも出たことがある。医科大学としては、私立の方が資金が潤沢なのは明らかだ。海外から医師を招いたり、施設を造ったりもできる。医師や看護師を育てるのにお金がかかるのも事実だ。医学生らを対象にした奨学金制度も充実しつつある。教育を受ける機会が均等であるべきなのは強調しておくが、裕福な家庭には医学部の研究、教育に応分の負担を求めたい。大学運営が厳しいことは事実で、海外のように寄付文化がより普及してほしいと思う。付属病院の行うクラウドファンディングには協力者も多く、成立も増えてきている」

 ―医療を志す学生へメッセージは。
 「医療、看護は人類に必須。モチベーションを高めて勉学に励んでほしい。同時に、病に悩む人とじかに接し、苦しみや喜びに共感してほしい。病気を治すだけでなく患者に寄り添える医療人を志してほしい」
 (浜松総局・松浦直希が担当しました)

 こんの・ひろゆき 1978年、慶応大卒。浜松医科大付属病院長、同大副学長などを経て2016年4月から現職。一般社団法人日本専門医機構理事。岩手県出身、浜松市中央区。 【1】産学連携へ新法人設立 大胆な発想で存在感
【2】起業家魂で創造性育成 安全と効率 技術提供
【3】静岡県内への医師定着に力 地域医療充実へ役割
【4完】今野弘之学長ロングインタビュー「資源の臨機応変な活用が重要に」

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