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テーマ : 防災対策

【時評】防災の数値情報の捉え方 細かく読まず大まかに(牛山素行/静岡大防災総合センター教授・副センター長)

牛山素行氏
牛山素行氏

 数値で表されるさまざまな情報は、それぞれ異なる正確さの度合いを持っている。これが「精度」と呼ばれ、数値のばらつきの幅(誤差と言うこともある)などで表される。ハザードマップなどで用いられる地図も実は数値情報の集合体であり、地図上にさまざまな形で表現されている記号や標高などの情報にもそれぞれ精度がある。
 国土交通省が整備している「重ねるハザードマップ」の背景図として使われている地図は国土地理院が整備している「地理院地図」で、さまざまな地点の標高を表示できるが、この標高という数値の精度、すなわち実際の値に対するばらつきの大きさは場所によって異なる。「DEM5A」という高精度のデータが用いられている場所では0.3メートル以内とされているが、「DEM10B」というデータが用いられている場所では5.0メートル以内である。後者の場合、ある地点の標高が10メートルと表示されていても、実際の標高は5~15メートルの範囲のいずれかでもおかしくないことになる。
 地図上に記されているさまざまなものの位置情報にも精度がある。地理院地図を建物の形が分かるくらいに拡大した際の水平方向の位置の精度は17.5メートルとされている。例えばある地点が「重ねるハザードマップ」で土砂災害警戒区域の境界線から地図上で5メートル外側にあると読み取れた場合、その地点は実際に区域外かもしれないが、境界線から12.5メートル内側(区域内)にあるのかもしれないということになる。JR在来線車両の標準的な長さが約20メートルであることを思い浮かべると、17.5メートルというのは決して短くない長さであることがイメージできよう。
 数値で表される情報はいくらでも細かく示すことができるが、細かく示せば「正確な情報」になるわけではない。複数の数値情報の間に大小関係があったとしても、その数値の情報が持っている精度より細かな値であればあまり意味のある違いではない。実は防災に関わる数値の情報の中で、地図上の位置や標高という情報は最も精度が高いものの一つであり、他の情報の精度はこれらに比べると桁違いに低いものがほとんどである。数値の情報は、細かく厳格に読み取ろうとせず、なるべく大まかに捉えていった方がよいのではと思う。
 (静岡大防災総合センター教授・副センター長)

 うしやま・もとゆき 長野県生まれ。信州大卒業。京都大防災研究所助手、東北大災害制御研究センター講師、岩手県立大准教授などを経て2009年に静岡大着任。内閣府、気象庁、自治体などの公的委員を歴任。日本自然災害学会副会長。専門は風水害を主対象とした災害情報学。

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