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テーマ : 防災対策

被災時の安否不明者氏名公表進む 家族の同意不要、捜索活動を加速 静岡県、能登地震対応注視【いのち守る・防災しずおか】

 多数の住宅が倒壊し、今もなお被害の全体像が見えない能登半島地震。石川県は発生翌々日の3日夜から安否不明者の氏名を公表し、一時は300人以上の規模となった。安否不明者を公表することで捜索活動の効率化が期待されるため、政府は2023年3月、「家族の同意取得は不要」と指針で明示。都道府県ごとに異なっていた対応の統一化が進んだ。南海トラフ地震に備える静岡県も石川県の対応を注視している。
石川県が公表した能登半島地震の安否不明者一覧表と同県の氏名公表基準
 安否不明者の公表が進んだきっかけの一つは、18年の西日本豪雨。広島、愛媛両県は個人情報保護を重視して安否不明者を基本的に非公表としたのに対し、岡山県は早期に氏名の公表に踏み切った。各自治体の個人情報保護条例が「生命などを保護するために必要な時は個人情報を提供できる」と定めていたこともあり、公表可能と判断した。その結果、本人や家族から無事を知らせる連絡が相次ぎ、安否不明者の数を一気に絞り込むことができた。
 21年7月に熱海市伊豆山で発生した土石流災害でも同様の効果があった。静岡県が発生58時間後に安否不明者64人を公表し、翌日までに41人の安否が判明した。この成果を踏まえ、県は同年11月、安否不明者や死者の公表基準をまとめた。
静岡県の被災者氏名公表基準懸命に捜索活動を行う県緊急消防援助隊=7日、石川県珠洲市宝立町(静岡新聞社取材班・小糸恵介)
 静岡県の安否不明者の公表基準によると、市町が情報収集を担い、発生24時間以内に住民基本台帳などを使って被災者名簿作成に着手する。ドメスティックバイオレンス(DV)やストーカー、児童虐待の被害者で居住地を知られたくない人など、住基台帳の閲覧制限がかかっている場合は名簿から除外。市町から送られた名簿を県が取りまとめ、発生48時間以内に公表する。
 県危機対策課の奈良大輔主幹は「安否不明者の情報は災害現場で捜索活動を行う消防などにも共有され、どの倒壊家屋を優先的に捜索すべきかといった判断にも用いられる」と話す。生存率が大きく低下するとされる発生72時間の目安も踏まえ、「能登半島地震でも捜索活動の効率化に生かされたはず」とみる。
 一方、死者の公表はハードルが高い。死者は個人情報保護法の対象外のため、23年に政府がまとめた指針には死者の公表基準は示されていないが、静岡、石川両県の基準では死者の氏名公表について、遺族の同意や承諾が必要と定めている。石川県危機対策課は能登半島地震について「死者が200人以上と多く、遺族に承諾を得る作業はできていない。現時点では公表は未定」としている。(石川県は15日から、遺族の同意が得られた死者の氏名公表を始めた。)
 (社会部・瀬畠義孝)

 死者氏名も情報として重要 静岡大・牛山教授
「安否不明者と同じく死者の氏名公表も重要」と話す牛山素行教授=静岡市駿河区の静岡大静岡キャンパス  被災者の氏名公表について、静岡大防災総合センターの牛山素行教授(災害情報学)は「大きな災害が起きるたびに家族の承諾なしで公表すべきか議論が繰り返されてきたが、ようやく『安否不明者は公表する』というコンセンサス(意見の一致)が生まれつつある」との見方を示す。その上で「微妙な問題で意見は分かれると思うが、死者の氏名も情報として重要であり、できる限り公表した方がいい」と訴える。
 被災者と連絡が取れない知人や友人は、安否確認のため行政に問い合わせるといった行動を取る。そういった人々の混乱をなるべく緩和し、行政の負担を軽減するためにも、死者の氏名公表が望ましいとする。
 牛山教授は、地域で起きた災害を伝承するため各地に建てられている慰霊碑にも犠牲者の名前が刻まれている点を強調する。「災害死者の氏名は、後世の人が過去の災害について調べる上でも必要な情報。犠牲者の名前があってこそ、リアリティーをもって災害を考えることができる」と話す。統計値としての「死者1人」ではなく、そこで生活を営んでいた人が災害に遭ったという事実を語り継ぐ必要があると主張する。

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