美術作家 丹羽菜々さん(三島市)揺れる広がる、色の帯【表現者たち】
額縁の中にとどまるのではなく、作品がどこまでも続くように。三島市の美術作家丹羽菜々さん(60)は、白く長い紙や布を種々の色で染めたシリーズ「色の帯」に、約10年前から取り組んでいる。風に揺られる「帯」が、周囲の空間に変化を与える。
ギャラリーの限られたスペースを複数人で分け合う状態に窮屈さを感じ、作品の展示場所を制約のない窓の外へ移した。「自分自身も広がっていく感覚。揺られた帯の色が風に溶けていった」。当初は紙の帯だったが、2014年から屋外の展示を重ねる中で、耐久性の高い材質に変えた。現在は裂けにくい化学繊維の布を使っている。
制作は画材や作品が所狭しと並ぶワンルームの自宅で行う。帯の一部を色付けし、乾燥を待って巻く。また白地部分を伸ばして作業する。帯を垂れる絵の具に霧吹きで水をかけてのばしていく。液状のアクリル絵の具は耐水性、耐光性に優れ、日光と風雨にさらされる過酷な環境でも鮮やかさを保つ。作品のどこに何色を置き、絵の具をどこまでのばすかは偶然性にゆだねる。「作品を少し自己から離したい。そうすると自分の考えを超えた現象が起きる」
月末に、父で現代美術家の勝次さん(91)との2人展が控える。過去最長50メートルの「色の帯」を3本展示する。野の花、流れる水、地の恵みを表す赤・青・黄を基調とし、緑鮮やかな芝生上で風をはらむように浮遊させる。会場を生命にとって必要不可欠な要素がそろった「再生の場所」として位置づけた。
テーマは「平和」。ロシアによるウクライナ侵攻を機に変わる昨今の世の中を、軍国少年として戦時を過ごし14歳で敗戦と社会の変貌に直面した父の経験と重ね見た。「反戦的な題材をそのまま描いたわけではない。時代の空気を感じながらの作品づくりに意味がある」
(教育文化部・マコーリー碧水)
丹羽勝次さんとの2人展「遠い空。近い空。」は、静岡市葵区の東静岡アート&スポーツ/ヒロバで30日から10月15日まで。