救命、物資配送 迅速確実に 静岡県総合防災訓練 浜松の関係団体が協力構築
浜松、湖西の両市で3日に行われた静岡県総合防災訓練。救助救出や物資輸送など各種訓練を展開し、住民や防災関係機関が連携の重要性を再確認した。
患者続々 30秒で選別、処置 トリアージ訓練
災害拠点病院の浜松赤十字病院(浜松市浜北区)では、病院敷地内に屋外救護所を設置し、地元医師会や市職員ら約80人が治療の優先順位を決める「トリアージ」の訓練を行った。災害発生から24時間の経過を想定し、続々と集まった患者役の市民を選別し、救護所で軽症患者の応急処置を行った。
トリアージ訓練をする関係者=3日午前、浜松市浜北区の浜松赤十字病院
医師が1人30秒を目安に呼吸数や脈拍などから重症度を評価し、看護師らが手首や腕にトリアージタッグを付けた。重症患者は院内の重症エリアにストレッチャーで搬送し、軽症者は救護所で応急処置の上、薬を処方するなど帰宅対応までの流れを確認した。数多くの関係者が現場に入り交じり、情報が錯綜(さくそう)する災害時を想定し、協力して声をかけ合った。
同市の西崎公康健康医療課長は「さまざまな機関が参加し、横の連携に課題が残った。役割分担が重要だと感じた」と話した。
(浜松総局・小林千菜美)
緊急輸送、代替拠点で手順確認
物資輸送の代替拠点である西濃運輸浜松支店トラックターミナル(浜松市東区)では、浜松、湖西両市と合同で国のプッシュ型支援物資を想定した緊急物資配送訓練が行われた。静岡県トラック協会や県倉庫協会の会員企業なども参加し、物資の受け入れから避難所への配送までの対応手順を確認した。
物資の仕分け作業に取り組む参加者=3日午前、浜松市東区
同施設を県の西部広域物資輸送拠点と市物資集積所に設定し、国からの物資を受け入れるとの想定で実施した。参加団体で事前に作成した計画を基に、到着したトラックの整理や荷降ろし、受け入れ物資の確認、両市への仕分け、引き渡しなどを実践。課題の洗い出しを進めた。
県は今回の訓練の結果を配送計画や広域物資輸送拠点の運営マニュアルに反映するとしている。訓練の担当者で県西部農林事務所の稲垣敦之技監兼企画経営課長は「今後も官民で連携し、迅速に物資を届ける体制構築を進める」と話した。
(浜松総局・仲瀬駿介)
遺体措置 検視など流れ実践
県警や浜松市などは遺体安置所での措置訓練を西区の旧北庄内小で行った。同市の医師会や歯科医師会、日本DMORT(災害死亡者家族支援チーム)などを含め約80人が参加。遺体の検視や遺族への引き渡しなどの流れを実践し、関係機関の連携を確認した。
遺体に見立てた人形を運ぶ訓練の参加者=3日午前、浜松市西区の旧北庄内小
身元不明で圧迫死を想定した遺体に見立てた人形が運び込まれると、受付の職員が搬送者から状況を聞き取り、遺体安置状況票などに記入した。遺体の洗浄や検視を実施した後、歯科医師が歯の治療痕で身元を特定する作業に取り組んだ。処置が終わった遺体は納体袋に入れて納棺。警察関係者が検視する台が高く、遺体を移動させる際に手間がかかることが指摘されるなど、課題も挙がった。
同市市民生活課の藤原邦生さん(50)は「(災害時の)イメージがつかめた。こうした経験をした職員は少なく、事前の想定が大事になってくる」と話した。
(浜松総局・大山雄一郎)