コロナ禍越え活動活発 しずおかランニングパトロール5年
ランニングをしながら地域を見守る「しずおかランニングパトロール(SRP)」は今秋、開始から丸5年を迎える。登録ランナーの増加と活動拠点の拡充に加え、協賛企業や教育現場による協力態勢の構築が進み、認知度は県内各地で高まっている。新型コロナウイルスの5類移行もあってランナー同士の交流機会が増えつつある中、10月からは第5期がスタート。新たな仲間を加えた見守り活動の活発化が期待される。
(社会部・薬袋貴信、荻島浩太)
拠点拡充、地域に浸透 交流深め「輪」広げる
波楽しみながら地域を見守る袋井・掛川エリアの登録ランナーと活動をサポートする袋井署員ら=3月下旬、袋井市
「長続きするには、みんなでわいわい楽しく活動することが大切。新しく入ってきたメンバーには特に明るく接しています」
趣味のランニングとボランティアを兼ね、第2期から登録ランナーとして活動する田中康夫さん(73)=磐田市=。第4期でも袋井・掛川エリアの拠点担当として、同年代の仲間に加え、現役、若年層世代との親睦強化を意識した各種取り組みに力を入れてきた。
活動を始めた3年前は既にコロナ禍。制限の中、定例パトロール(SRP)に加え、自主SRPとして袋井市内の小学生の下校見守り活動を始めた。現在は五つの小学校の通学路で定期開催するほど充実し、「気を付けて帰ってね」と声をかけると、児童が見慣れた姿に「こんにちは。分かったよ」と笑顔で応じるのが日常風景になったという。
下校時間帯に合わせた自主SRPは静岡市葵区などでも長期的に続けられる。各学校側との連携態勢を構築し、保護者からの要望を受けることも多い。第5期でも同様の活動が各地に広がると期待されている。
現役世代の登録ランナーが活動できる時間帯は夜間が中心で、昼間は定年退職した世代だけになることも。それでも、各地で協賛企業の従業員らが仕事の合間を縫って参加してくれている。袋井・掛川エリアでも、田中さんは新規協力者を温かく迎え入れてきた。その日の活動の最後には必ず感想を聞くようにしていて、「お互いに楽しくフランクに。会話から何かが生まれ、次の参加意欲につながる」と日々、新たな仲間の獲得策に知恵を絞る。システムエンジニアだった経験を生かし、活動はユーチューブで紹介し、仲間から好評を得ているという。
気になるのは、他エリアの状況だ。人との交流機会がコロナ禍以前に戻りつつある中、「SNSを活用してランナー同士の『輪』を太く長く広げたい。5期目はもっと交流の場に参加したいね」と意気込む。
4期目では、新たな枠組みで「ウオーキングパトロール」を静岡エリアCで試みた。「体力的に徒歩なら参加できるかも」と挑戦した静岡市駿河区の近藤宣明さん(64)は「余裕を持って活動できた。せっかく始めた活動なので」と、5期目もランニングメンバーとして継続する意向だ。
登録ランナーは4期目で412人まで増え、県内に根付きつつある。県警生活安全企画課の若林貴彦防犯まちづくり課長補佐は「おそろいのシャツやビブスで道行く人に声をかける姿は非常に心強く、ランナーの防犯意識の高さを感じる」と感謝する。各署や本部の警察官は防犯の助言をしながらランナーを担うなどして活動を後押ししてきた。若林課長補佐は第5期生の積極的な応募を期待し、「今まで以上に『見守りの目』が増え、活性化するよう支援を続けたい」と話す。
定例の拠点 協賛社が協力 ランナー集合場所14エリア29カ所
出発前に入念に準備運動する登録ランナー=8月中旬、静岡市駿河区のネッツトヨタ静岡小黒店
しずおかランニングパトロール(SRP)の活動は、月1回、グループランニングやウオーキングを行う「定例SRP」と登録ランナーや友人同士が3人以上集まって行う「自主SRP」の2種類に大別される。ランナーの集合場所として、計14エリア29カ所ある定例拠点を中心的に提供しているのは、活動趣旨に賛同した協賛企業だ。
セキスイハイム東海(浜松市中区)は県内にある同社の住宅展示場計13カ所を週4日、スポーツ用品店「シラトリ」(静岡市葵区)は6店舗を平日のみ提供している。
ネッツトヨタ静岡(沼津市)は、地域の安全に貢献したいという思いから6店舗を拠点に提供。定例SRPには同社社員も参加する。営業スタッフの丸尾康太さん(34)は「さまざまな年代のランナーと交流できて単純に楽しい。若いスタッフにも積極的に参加してほしい」と話す。
地域見守る同志が親睦 静岡 4年ぶりに交流会
4年ぶりの交流会開催で盛り上がる登録ランナー=7月下旬、静岡市駿河区
地域の「見守る目」としての防犯活動に主眼を置きながら、健康増進やランニング仲間との交流もSRPの大きな魅力。登録ランナーの拡大に伴い、ランナー個々の走力向上に加え、仲間を“つなぐ”場としても存在感を放っている。
7月下旬、静岡市駿河区で登録ランナーからの要望で4年ぶりに開催された交流会。県内各地から約60人の登録ランナーが集い、そろいのTシャツやビブスを着てランニングを楽しんだあと、飲食で懇親を深めた。各地域の防犯事情の共有や健康自慢まで、普段は接点がないランナー同士の話題は尽きず、会場は盛り上がった。
1期目から参加している市川祥平さん(62)=同市葵区=は「SRPの仲間は地域を守る『同志』。趣味を通じて社会に貢献でき、やりがいを感じている」と胸を張る。
村串弘親さん(40歳 河津町)
何げない危険箇所に気付ける
元々趣味でランニングしていたが、陸上仲間の後輩が縁で1期目から継続して参加している。活動を通じ、車に乗っている時とは違った角度から地域を見ることができ、何げない危険箇所に気付けるようになった。地域交流の貴重な接点として、どんどん新メンバーに加わってもらい、防犯意識を高めたい。他地域の活動にも参加し、交流を深めたい。
笠野浩志さん(51歳 藤枝市)
交通マナー順守 大人が模範を
パチンコチェーン店で店長を務めながら、仕事以外で社会貢献できることを模索していた。地域づくりへの参画として、社内では、自らも含め約70人が活動に参加する。活動を通じて、若い世代に自転車マナーを啓発する難しさを感じている。「SRP」は誰でも参加できる社会貢献。大人が率先して交通マナーを守り、模範として“背中”を見せることが重要だと思う。
斎藤由佳子さん(54歳 静岡市清水区)
街中と郊外 防犯ポイント違う
運動不足を痛感し6年前にマラソンを始め、「SRP」は2期目から参加。仲間と走ることで地域とつながりができ、生活に彩りが生まれた。コロナ禍で制限がありながら、人や地域と交流することで世界観が広がった。4期目は拠点担当として、コース設定を任されている。街中と郊外では注意すべき防犯ポイントが違う。走りやすさとの両立は悩ましいが、楽しみながらコース選定している。
木下真吾さん(46歳 湖西市)
年代や性別を超えたサークル
ボランティア活動への興味からSRPには2期目から参加。活動に参加することで、最大で約20キロ減量に成功。ハーフマラソンに参加できる走力もついた。SRP仲間と参加した湖西リレーマラソンで4位を獲得するなどランナー同士の連携も深めている。浜松エリアは市民ランナーも多いので、「年代、性別を超えた大人のサークル」として幅広い世代がSRPに参加してほしい。
宮沢理恵さん(51歳 三島市)
認知されてきたSRPの活動
活動に参加し始めたころは、すれ違う歩行者に「こんばんは」とあいさつするのが気恥ずかしく感じていた。今では、活動外の時でも声をかけそうになるほど慣れてきた。SRPのTシャツをおそろいで着て走っていると、「ご苦労さま」と励ましてもらえることもあり、SRPの活動が認知されてきたと感じる。地域安全の一翼を担えるよう、今後の活動にも参加していきたい。 第5期生ランナー 9月1日まで募集 しずおかランニングパトロール事務局は9月1日まで、第5期生の登録ランナーの応募を受け付けている。募集数は4期目と同様、最大500人に設定。新規ランナーの気軽な応募を期待し、幅広い年齢層、職業などのランナーによる活動強化につなげる。
5期生の活動期間は10月1日から2025年3月31日までの1年半。1年間だった4期生より期間を延ばし、より中長期的な取り組みとして続けてもらう。
対象者は県内在住・在勤・在学の18歳以上(23年10月1日時点。高校生は除く)。毎月第2金曜日に各拠点で実施する定例SRPに参加する。事前講習会は10月14、15の両日に中部、西部、東部のエリアごとに分けて行う。結団式は10月7日にツインメッセ静岡(静岡市駿河区)で開く。
応募要項などの詳細はランニングパトロール事務局ホームページなどで。問い合わせは事務局<電054(284)9236>へ。