社説(6月6日)参院合区解消 改憲議論から逃げるな
最高裁が違憲状態と判断した参院選の「1票の格差」を是正するため導入した隣接県を一つの選挙区にする合区を解消することについて、自民党は参院憲法審査会で2025年の次期参院選に間に合わせるため、改憲ではなく、関連法の改正で合区の解消を実現させるべきとの見解を示した。自民は党改憲案で改憲による合区解消を掲げているが、改憲には時間を要するとした上で、法改正による実現を容認した。
法改正による合区解消は、最大野党の立憲民主党が求めたため、実現に向けた動きは加速するかもしれない。だが、合区が解消されれば、1票の格差の拡大につながり、憲法が求める投票価値の平等に逆行する。有権者の理解を得られるのだろうか。改憲議論から逃げてはならない。
10年と13年の参院選で違憲状態と判断された1票の格差は合区導入後、縮小し、16年、19年の選挙はともに最高裁が合憲の判決を出した。22年の選挙は年内にも憲法判断が下される。一方、合区の対象となった「高知と徳島」、「島根と鳥取」の4県では投票率が低下し、合区は地方を軽視しているなどと、解消を求める声は大きい。
都市部への人口集中と地方の人口減少に伴う1票の格差拡大は、憲法制定時には想定されていなかったといえる。選挙区を都道府県単位とする憲法上の要請はない。合区解消で1票の格差が違憲と判断されないよう自民は各都道府県から最低1人の議員選出を憲法に定めるため早期改憲が必要と訴えてきた。従来の主張の方が筋が通っている。
憲法は衆参両院の選挙区は法律で定めると規定する。立民は国会法や公選法を改正し、地方問題を審議する機能を参院に付与することで、改憲しなくても合区解消は可能と主張する。だが、1票の格差の問題にはどのように対応するのか。自民にも立民にも有権者が納得できる説明が求められる。
日本維新の会は、比例代表の定数を大幅に減らして選挙区に回せば1票の格差は是正され、合区は解消されると訴える。公明党は全国11ブロックの大選挙区制導入を求め、共産党は全国10ブロックの非拘束名簿式選挙制度を提案する。各党の主張には議席増への思惑も見え隠れするが、いずれも改憲は要しない。
最高裁は16年、19年の選挙で、1票の格差是正に向けた合区の導入や抜本的な見直しを図るという国会の決意も評価して合憲とした。22年選挙は高裁レベルで合憲、違憲状態の判断が大きく分かれている。抜本的見直しが進展していない中での合区解消の議論。最高裁がどのような判断を下すのかにも注目したい。