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山里移住「皆に愛された」 浜松土砂崩れで死亡の35歳男性 地域のため尽力

 静岡県内を襲った台風2号による記録的な大雨で、浜松市北区引佐町の土砂崩れで行方不明になっていた男性の死亡が4日、確認された。「地域のために活動してくれた」「優しい人だった」。無事を願う住民の間に悲しみの声が広がった。磐田市の男性は依然行方が分からず、捜索活動が続いた。被災地では災害ボランティア活動が始まり、復旧作業が本格化した。

土砂崩れの現場近くに献花台を設置する地域住民=4日午前10時ごろ、浜松市北区引佐町渋川
土砂崩れの現場近くに献花台を設置する地域住民=4日午前10時ごろ、浜松市北区引佐町渋川
水野真彰さん
水野真彰さん
土砂崩れの現場の前で献花し、手を合わせる住民=4日午後、浜松市北区引佐町渋川
土砂崩れの現場の前で献花し、手を合わせる住民=4日午後、浜松市北区引佐町渋川
土砂崩れの現場近くに献花台を設置する地域住民=4日午前10時ごろ、浜松市北区引佐町渋川
水野真彰さん
土砂崩れの現場の前で献花し、手を合わせる住民=4日午後、浜松市北区引佐町渋川

 浜松市北区引佐町渋川の土砂災害で亡くなった水野真彰さん(35)は、2020年4月から2年間、中山間地域の維持、活性化の担い手となる同市の「浜松山里いきいき応援隊員」として同町で活動し、隊を卒業後も定住して地域のために奔走した。地域住民は「優しくて、みんなから愛されていた」と口をそろえた。
 関係者によると、水野さんは同市南区の実家で家業を手伝うなどしていたが、山登りや狩猟など自然の中で過ごすことに関心を持っていたため、草木や生き物が豊かな同町への移住を希望して同隊に参加したという。地元のNPO法人の活動や農作業の支援、鳥獣被害の見回りなどに汗を流し「渋川に残ってほしい」と地域住民に頼まれるほど厚い信頼関係を築いていた。
 隊を卒業後には被災した民家に移り住み、草刈りや木の伐採を請け負う住民グループで活動した。民家は草木や沢に囲まれた場所に位置し、「雑草が生い茂って大変では」と心配した住民もいたが「近くに小川が流れている家に住むのが夢だった」と選んだという。
 面倒見が良く、近所の高齢の夫婦がペットを飼うか迷っていた際には「一緒に世話をするので飼いましょう」と背中を押したが、実現はならなかった。地元の子どもたちと遊ぶ姿もよく見られたという。一家で水野さんと交流のあった伊藤八右さんは「狩猟免許を生かして農作物の被害を防ぎたいと語っていた。まだ若く、渋川の未来を背負ってくれると期待していたのに…」と肩を落とした。
 地域を愛し地域に愛されていた水野さん。未明まで続いた救助活動を見守った住民ら十数人は、警察官や消防隊員とともに黙とうをささげ、水野さんの遺体搬送を見送った。4日には現場近くに献花台を設け、花を手向けた。
 現場を訪れた水野さんの母親は「実家にあまり帰ってこなくなるほど、やりたいことをして元気に過ごしていた。今でも信じられない」と力なく語った。

浜松市長「大変残念」  元浜松山里いきいき応援隊の水野真彰さんが亡くなったことについて中野祐介浜松市長は4日、「地域の皆さんと共に頑張ってくれて、われわれも今後のさらなる活躍を期待していた。大変残念だ」と述べた。

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