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社説(5月26日)保護司の確保 持続化へ制度見直しを

 罪を犯した人の立ち直りを支援する保護司が減少している状況を受け、法務省は保護司の確保に向けて制度を見直す有識者の検討会を設置した。高齢化や社会情勢の変化を踏まえ、年齢制限緩和、報酬制や公募制の導入などを議論する。保護司は政府が対策に力を注ぐ再犯防止にも不可欠な存在である。持続できる制度を目指してほしい。
 保護司は法相が委嘱する非常勤の国家公務員で、実費以外は無給のボランティア。支援の対象者と定期的に面会し、生活の助言や指導、就職や居住先の相談などを通じて社会復帰を手助けする。国内の犯罪認知件数は減少傾向が続き、再犯も減っている。専門職の保護観察官と協力する保護司の献身的な活動が貢献しているとみられる。
 ただ、初犯の減少幅がより大きいため、全犯罪に占める再犯の割合は上昇傾向にある。さらなる犯罪減少を図っていくには、保護司の確保が前提になる。
 全国の保護司は今年1月現在、定数5万2500人に対して4万5654人。定数割れは常態化し、特に近年は減少が進んでいる。保護司の担い手不足解消へ、できる限り早く対策を講じたい。
 法務省の検討会は、会社などを退職した人の委嘱拡大を目指して、新任時の年齢を原則66歳以下とする年齢制限の緩和を議論する。企業の定年延長や再雇用が定着してきた。現実に即した見直しといえるだろう。
 一方で、保護司の平均年齢は年々上昇し、60歳以上がほぼ8割を占める。若返りも課題で、現役世代の担い手増加も目的に報酬制の導入を議論の対象にする。
 保護司と同様、各地域でボランティアとして活動する民生委員も、なり手不足が深刻化している。担い手の善意や使命感に頼る社会貢献制度は、曲がり角を迎えているのではないか。無報酬のままでいいのかという議論は、保護司に限らず重要なテーマだ。
 各地区の保護司会が担っているといえる保護司の人選に公募制を取り入れるかどうかも話し合うという。
 法務省は2021年、76歳未満だった年齢上限について、本人が望めば78歳まで活動できる「特例再任」をスタートさせた。また、自宅以外の面会場所の拡充、経験の浅い保護司がベテランと一緒に面会する制度の活用なども進めてきた。こうした保護司の不安や負担を軽減する新たな取り組みは今後も欠かせない。
 16年施行の再犯防止推進法は国とともに自治体の責務を定めた。在留外国人が増えている自治体では罪を犯した外国人の更生のため、外国籍保護司の確保なども検討していいのではないか。

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