大自在(4月22日)「ワン・オブ・アス」
先日、三島市出身、在住の全盲の和太鼓奏者片岡亮太さんと、妻のホルン奏者山村優子さんの演奏を静岡市内のブックカフェで聴いた。片岡さんはカホンなどパーカッションに持ち替え、山村さんと共にジャズのスタンダードナンバーやオリジナル曲を色彩感豊かに披露した。
2人は米ニューヨークで出会い、ユニットを結成した。その演奏を聴くのは、日本での活動スタートを11年前に取材して以来だ。和太鼓とホルンという“異分野”の融合に、強く引きつけられた。
片岡さんは10歳の時に網膜剥離[はくり]で視力を失い、県立沼津盲学校(現沼津視覚特別支援学校)で和太鼓に出合った。社会福祉士でもある。ニューヨークではコロンビア大大学院の聴講生として障害学を学びながら、音楽の幅を広げた。
毎月、近況報告を交えたニュースレターをメールで送ってくれる。最新号に添えられたコラムのタイトルは「ワン・オブ・アス」。片岡さんは大学時代、「障害がある僕も違和感なくその輪の一員」となる「ワン・オブ・ゼム」でありたくて無意識に努力していたという。
それが、母校上智大学の卒業15周年式典に出席して旧友と再会し、皆が同じ場所で学んで今にたどり着いていると思った瞬間、「ワン・オブ・アス」という思いがわき上がった。「長年纏[まと]っていた薄膜が剥[は]がれたような気がしました」とつづる。
静岡市での演奏でたたいたカホンは、ニューヨークで山村さんとのセッションで使った物だった。原点を忘れず、これからもまっすぐに音楽と向き合っていくに違いない。