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テーマ : 経済しずおか

育休中のリスキリング どう考える?⑦読者の意見 【賛否万論】

 「育休中のリスキリング(学び直し)どう考える?」は今回が最終回となります。デジタル技術による社会や生活の変革「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が進み、幅広い層から学び直しのニーズが高まっています。育休中にリスキリングを望む人向けに、学びや育児の支援充実が求められています。同時に、子育てに専念する時期を過ごした後で、学び直したい人向けの学習や再就職の支援も大切です。

その時しかできないことを
読者 平賀亜紀さん(沼津市)パティシエ  
 12年前、勤めていた飲食店を妊娠をきっかけにやめてフリーランスとなった。当時は産休、育休なんて取れないお店が多かった。幼児を育てながら、貯金を切り崩して、スモールステップで起業の準備をした。
 当時ちょうど、子連れ出勤が話題だったこともあり、未就園児だった子どもを連れて仕事場に行くこともあった。多くの人は子どもを一緒に見てくれて、とても助けられた。
 育休の取得率は上がっているが、いまだに取れない人もいる。育児休業給付金も全員が受け取れるわけではない。職種や働き方にかかわらず、誰もが産前産後を安心して過ごせる体制を整えてほしい。
 今は先の見えない時代。どんな立場の人も、学び続けることは必要だ。働く環境や生き方を自由に選べる時代でもある。
 子育てや学びの仕組みが整った上で、それぞれが、育休中にしかできないことを楽しめば良い。学びたい人は学べば良い。ただ、子育てに専念したい人や、一緒に子育てしてくれる人がいなくて大変な思いをしている人には学びを強制すべきではないと思う。

 育休と学び 結び付けないで

読者 クッキングお父さん(静岡市)30代会社員
 子どもを産み、育てることは大きなライフイベント。そんな状況の人に、国や企業が学び直しを求めることに違和感を覚える。男性の育休取得率がなかなか上がらないのに、学び直しの話題まで登場したことにも困惑する。
 そもそも、育休というプライベートの時間をどう過ごすかは、個人や家庭の自由であるはずだ。国会では「リスキリングと産休育休を結び付けて支援を行う企業に対し、国が支援を行う」という提案が議員からあった。逆ではないか。国には、企業にリスキリングと従業員の産休育休を結び付けないように指導してほしい。
 妻は育休中、キャリア停滞への焦りから資格を取得した。夫婦で家事育児を分担しても、互いの負担がゼロになることはない。
 昼夜を問わない頻回授乳やおむつ換えでただでさえ寝不足の中、妻は睡眠時間を削った。勉強の目標を達成するため、少しでも多くの時間を勉強に充てようとしていた。真面目な彼女は自分を追い詰めて疲弊し、いつもイライラしていた。子育てには、時間と心のゆとりが必要だと強く感じた。
 今後育休を取る予定がある人は、心身をしっかり休め、子どもにゆったりと向き合ってあげてほしい。

 時間と心 余裕あるなら

読者 Pianonさん(静岡市清水区)
 25年前、第2子の産育休を10カ月取得中に、今でいうリスキリング、MicrosoftのMOUSの資格を取得しました。
 4歳(年中)の長男は育休前から通園していた保育園にそのまま8時間預けることができ、第2子はよく寝てくれる子だったため、自分の時間がたくさんあり、この機会に資格を取ろうと自宅でテキストで勉強したり、ベビーカーに乗せてセミナーに参加したりと有意義に過ごしました。
 1人目の時は悩みながらの子育てで、とても勉強する余裕などありませんでしたが、2人目の時は慣れてきて手の抜き方もわかり、気持ちの余裕もありました。
 育休中に保育園に預けられない場合は上の子の世話があるので、その間勉強するなんて絶対無理だと思います。
 就職してから1年間も休めるなんて育休しかないし、3人目はないだろうと思うと、この貴重な時間を無駄にせず過ごしたいという気持ちが強かったです。
 この時期に取得した資格は自分の自信にもなり、その後の再就職にも役立ちました。気持ちの余裕があり、時間を捻出できるのであれば、学び直しは私は良いことだと思います。

 「今」と向き合う経験が力に
読者 やっちゃんさん(静岡市)60代
 3歳違いの3人の男の子の母です。今年一番下の息子が社会人になりました。
 自分の頃は、結婚、出産のために退社するのが当たり前だったので、育休を取ることができるようになって働きやすくなったなあと思っていましたが、今度は育休中にもいろいろ考えてしまうのだと知りました。
 子どもが小さいうちは家でできる仕事をしていましたが、子どもたちの成長に合わせて外で仕事を始めました。就職や大学で子どもたちが静岡を離れてから資格を取り、今は資格を生かした仕事をすることができています。
 子育て中は先が見えないし、毎日のことに追われて気持ちが焦ってしまうこともあると思います。でも今、目の前にいる子どものことを一番に考えて良い時だと思います。その経験はきっとこれからの自分のプラスになっていくと思います。子どもの手が離れてからでも、ちゃんと自分のしたいことができるのです。今しかできない経験を大切にしてほしいです。

 論点整理 難しく
読者 大島宏幸さん(長泉町)
 そもそも、リスキリングしたからといって賃金が上がるとは限らない。欧米は、ジョブ型雇用だから職種で給料が決まる。賃金を上げたければスキルアップして転職するしかない。だからリスキリングして頑張る。日本は、終身雇用で年功序列。頑張ると賞与の査定がちょっと良くなるか、昇進が早まるか。「育児休業中のリスキリング」は、ツッコミどころ満載で論点を絞るのが大変。
 育休中にスキルアップを考える女性は、数%ではなかろうか。「大企業勤務か公務員で多くの支援が受けられる女性で、何事にも積極的に頑張る人」というイメージがある。90%以上のサイレントマジョリティーの人は、現状では無理と考えるのでは。非正規雇用の場合は、支援が少ないと思う。シングルマザーは、かなり厳しい状況になると思われる。
 子どもが小さい期間は、どうしても同僚に迷惑をかけてしまうという気持ちがあると思う。だから、職場復帰後に短時間で成果を出さねばと頑張る。バブル期の24時間働けますかのCMや社畜、燃え尽き症候群などが思い浮かぶ。ストレス過多でメンタルがやられてしまう人もでてくるかも。
 本筋は、子どもが小さい時の育児支援を充実させるという土台を議論した上で、リスキリングという選択肢もあるとすべきだと思う。根っこの問題を議論しないで枝葉の問題を先に、あれこれ議論しているような気がする。
 2021年6月のユニセフの報告書によると、先進国の育休、保育政策などを評価したランキングで、日本は育休制度が1位。制度設計は良いのに取得率は低い。制度を整備しても、企業中心の考え方が変わらないとダメだ。
 男性の育休取得率が高いアイスランドがジェンダー平等の社会に大きく変わるきっかけは、“女性たちのストライキ”だという。社会の共通認識が変わるためには、ショック療法が必要だ。男性の育休取得率を上げないと、女性がリスキリングをやる時間がない。課題は山積している。
10代から育児教育を
 学び直しというよりも、元々学んでいない男性中心社会が問題だと思う。個人が悪いのでなく、社会問題だ。日本の企業は、海外に比べて生産性が低いと言われる。労働生産性の21年の国際比較では経済協力開発機構(OECD)加盟の38カ国中27位。休みが取りにくい。無駄な残業があるなど、仕事のやり方に問題があるのだろう。
 また、小学生、中学生の時の性教育で育児について教育すべきだ。10代の頃に学んでおけば、パパになった時に、何をすればよいのか迷うことも減るだろう。

次回のテーマ 
どうする少子化 国と地方ができることとは
 次回のテーマは「どうする少子化 国と地方ができることとは」です。日本の年間出生数は初めて80万人を割り込みました。想定より10年超早いペースです。歯止めをかけなければ人口は減り続け、将来的に社会機能が維持できなくなる恐れが指摘されています。
 岸田文雄首相は“次元の異なる”対策構築の必要性を訴え、政府は3月末、たたき台(試案)を公表しました。若い世代の所得増や子育て世帯への切れ目のない支援を柱とし、財源の議論が始まりました。
 国と地方がそれぞれできることとは-。他県の先進事例への取材や有識者インタビューを通じ、「静かな有事」とも表現される事態を考えます。
 (テーマは変更される場合があります)

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