⚽新生清水 乾貴士 昇格へ導く逆襲タクト 秋葉体制の中心、トップ下で存在感【しずスポ】
J2清水のMF乾貴士(34)が秋葉監督体制となったチームで際立つ存在感を放っている。3日の監督交代後、リーグ戦に2戦連続で先発出場。「新しいチャレ
ンジ」と語る中盤のトップ下の位置で縦横無尽に動き回り、攻撃のタクトを振るっている。
「もう一回成長したい」 希代のドリブラー 新たなる挑戦
背番号33から繰り出される、糸を引くような縦パスは、チームの攻撃のスイッチだ。複数の選手がこれから展開されるパスワークをイメージし、一気に動き出す。今季リーグ初先発となった8日の東京V戦では、同点弾につながるパスをゴール前に差し込んだ。
低迷するチームの立て直しを託された指揮官は「誰がこの悪い流れを変えてくれるのか。いろいろ考えた中でベストが乾貴士だった」と言う。起爆剤として白羽の矢を立てられた格好となったが、経験豊富な元日本代表アタッカーは意気に感じていた。
今季は開幕前の春季キャンプで 左膝を負傷。予定より早い回 復で復帰したものの出番は思 うように回ってこなかった。 リカルド前監督体制でのリー グ戦出場は3試合、38分にとどまった。自身の調子は悪くないと感じていただけに、歯がゆい時を過ごしてきた。
託されたトップ下のポジションも意欲をかき立てた。サイドからの巧みなドリブル突破やシュー トで名をとどろかせてきたテク ニシャンも、ベテランと言われ る年齢になった。「昔はもっと 自分で仕掛けたりできていた が、キレはどうしても落ちて きてしまっている」
中央でのプレーは、周囲の選手との関わりがより重要となる。どう仲間を生かしながら自らもゴールに直結する働きができるか。自身にとっての新たな挑戦で「もう一回成長したい思いがすごく強い」と語るその表情には、充実感がにじむ。
チーム最年長でありながら、練習から誰よりも声を出し、プレーの良しあしに一喜一憂する。楽しむことを忘れない“サッカー小僧”にこれまで以上の笑みが広がれば、1年でのJ1復帰を目指すオレンジ軍団の輝きも増していくはずだ。
いぬい・たかし 1988年6月2日生まれ。滋賀県出身。滋賀・野洲高から2007年にプロ入りし、11年からはドイツとスペインで計10季プレーした。18年のワールドカップ(W杯)ロシア大会では2得点を記録。昨年6月、所属していたC大阪を退団し、同7月に清水に加入した。