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社説(4月20日)Jアラート 信頼性向上が最優先だ

 危機管理では「空振りはしても見逃しは許されない」が原則といわれる。かつて東海地震に備えた警戒宣言の発令に関してもよく使われたフレーズなので覚えている人もいるだろう。それを改めて確認しておきたい。
 13日朝の北朝鮮弾道ミサイル発射に合わせ、全国瞬時警報システム(Jアラート)が発表された。通勤・通学の時間帯を直撃。落下が想定された北海道ではJRなどが運転を一時見合わせたほか、地下街などに避難する人もいた。その後情報は訂正されて、日本の領域内には飛来しなかった。結局、空振りだった。
 システムは、ミサイル発射を探知後、ただちに軌道計算してアラートを出すため、ある程度の不正確さはやむを得ない。確度が低くても国民への危害が少しでも想定される場合、発表をためらうべきではない。その意味では政府の発表は妥当だった。
 ただし、正確さ追求のためにミサイル探知や情報収集、情報解析の精度向上は欠かせない。加えて情報更新に伴う訂正や追加はつきものだ。その場合は理由を丁寧に説明すべきだ。まず発表する政府とシステムに対する信頼性向上を図ることが最優先だ。
 発表されれば多数が影響を受ける。結果が異なることが何回も続くようならシステムの信頼性は失われる。最悪の場合、「おおかみ少年」となって肝心な時に住民が避難行動を取らない恐れがあることを忘れてはならない。
 アラートの事態が起きた場合、交通機関の停止や住民の避難行動などがどの程度の規模になるのか、それに伴う混乱の度合いなどを、地域ごと事前に想定しておきたい。住民が冷静に行動できるように事前の周知も求められよう。
 北朝鮮の発表では、発射したのは固体燃料を使った3段式の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星18」。1段目は通常の弾道軌道で、2、3段目は垂直に近い高角度の「ロフテッド軌道」で打ち上げたとしている。
 この動きにシステムが対応できなかったのは明らかだ。Jアラートは当初、「北海道周辺に落下するとみられる」と避難を呼びかけたが、その21分後には「落下の可能性がなくなったことが確認されたので、訂正する」と伝えた。
 松野博一官房長官は記者会見で「ミサイルを探知した直後、レーダーから消失した」と説明した。「消失」とは何なのか。これでは爆発して四散したのか、探知圏内から外れたのか分からない。より分かりやすく説明しないと国民は理解も納得もできない。
 軌道を変更できるなど北朝鮮のミサイル技術は日々進化している。それに応じた備えを欠かすことはできない。

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