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社説(4月15日)親の通訳する子 連携して確かな支援を

 厚生労働省と自治体は、日本語が苦手な親の通訳を担う外国籍の子どもをヤングケアラーとして新たな支援を始める。役所や病院に親が行く際に子どもが通訳として付き添わなくてもいいように専門職を同行させる事業で、実施する自治体には国が費用の3分の2を補助する。
 外国人家庭では、来日した親は日本語が不慣れなのに対して、子どもは学校などで勉強して話せるようになる。日常生活で子どもが親の読み書きを補助する中で、行政手続きや病院受診に通訳として付き添うために学校を休まざるを得ないケースもある。
 ヤングケアラーは、大人に代わって日常的に障害や病気のある家族の介護、幼いきょうだいの世話などをする子どもと定義されている。社会全体で支えるべきと、ここ数年徐々に関心が高まってきたが、家族の通訳のために学校生活に影響を受けている児童生徒の存在はあまり知られていなかったといえる。
 こうした外国籍の子どもが一定数いることは、国や自治体が初めて行ったヤングケアラー実態調査で確認され、支援策が検討されてきた。
 こども家庭庁の発足とともに施行されたこども基本法は、子どもが置かれた環境にかかわらず、子どもの権利が守られ、幸福な生活が送られる社会を目指すと理念を定めた。決して恵まれた家庭環境とはいえない外国籍児童生徒の支援は、ヤングケアラー対策を重要施策に掲げるこども家庭庁の試金石になる。
 新事業は、通訳を必要とする家庭が自治体の担当窓口などに相談し、生活状況を踏まえた上で、支援するか判断する。自治体は臨時職員の雇用などで通訳を確保する。
 まずは支援制度を外国人家庭に知ってもらわなければならない。そのためには学校の協力は欠かせない。欠席が目立つ子どもに教師が声をかけ、助言することもできる。確実に手が差し伸べられるよう、こども家庭庁、厚労省、文部科学省の連携が求められるのは言うまでもない。
 厚労省が昨年4月公表した小学6年生対象の実態調査で、世話をしている家族がいるとの回答は6・5%で、うち世話の内容は3・2%が「通訳」だった。小学5年生から高校3年生までを対象にした静岡県の調査では「通訳」は6・6%。県内でも自治体によって差があり、菊川市では15・0%に上った。
 こども基本法は、自治体に地域の実情に応じた施策の策定を求めている。県内で最も多く外国人が在住する浜松市は2023年度予算に通訳派遣を含めたヤングケアラー関連費を計上した。各市町は今後も実態の把握に努め、効果的な対策を考えてほしい。

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