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社説(4月2日)労災防止計画 事業主は主体的実践を

 厚生労働省静岡労働局が策定した第14次労働災害防止計画(2023~27年度)は、第13次計画期間に増加傾向にあった高齢者の転倒、腰痛の防止や外国人の事故減少を重点化した。高齢者も外国人も持続可能な地域経済の大切な支え手であり、実効が上がるよう周知徹底してほしい。
 労災防止計画は労働安全衛生法に基づき5年ごとに厚労省が策定し、都道府県労働局も管内状況を踏まえて更新する。
 労災事故でいちばん苦しむのは当人だが、ひとたび発生すると企業も休業損失や信用失墜、場合によっては訴訟費用工面など多大な影響を被る。逆に安全衛生への意識が高い「健康経営」は社会的にも評価され、生産性向上や人材確保にもプラスに働く。このことをしっかり伝え、事業主の自発的、主体的な実践を促す必要がある。
 静岡労働局の第13次計画の実績は「5年間で127人以内」とした死者数が目標上限と同じだった。休業4日以上の年間死傷者数は22年、新型コロナウイルス感染症によるものを除いても目標より500人以上多い4518人だった。
 転落や機械への巻き込まれなどに加え、商業、社会福祉施設を中心に転倒、腰痛といった事故や被害が増えた。また、外国人労働者の死傷者が増加傾向にあるのが本県の特徴で、労働者千人当たりの年間死傷者数は21年、全国3・31人に対し、静岡は5・04人だった。
 外国人の労災死傷者は毎年300人前後いて、その2割程度が技能実習生だ。製造業での事故が多く、無資格でフォークリフトを操作するなどの事例が問題視される。ちらしの配布など通り一遍の広報にとどめず、外国人に直接届く注意喚起を工夫してほしい。県、市町、関係機関や多文化共生の支援団体などとの連携も進めなければならない。
 団塊ジュニア世代が高齢者となる40年には国内の労働者の供給不足が1100万人超になるという予測を、リクルートワークス研究所が明らかにした。静岡県は、必要とされる労働者数の29・6%が不足すると算出され、不足率は道府県別で10番目に高い。
 働き手が不足するという予想は、それだけ地元の経済や産業の維持、成長が見込まれるということでもある。課題解決へあらゆる手を打たなければならず、高齢者や外国人にも安全安心な就労環境づくりはその柱の一つにほかならない。
 こころの健康も重要だ。労働者のストレスチェックは県内でも一定の浸透が図られているとしているが、実施率は業種によってばらつきがある。コロナ禍の経験を労災防止の意識向上につなげ、安全で健康に働く環境づくりを進めたい。

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