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社説(3月28日)ソウル定期便再開 国際線 さらなる拡充を

 静岡空港でソウル線の定期便が再開した。約3年ぶりの国際便。再開第1便の訪日客は約140人だった。静岡空港からはほぼ満席となる約180人を乗せ韓国・仁川国際空港に向かった。水、金、日曜の週3往復する。
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う行動自粛の反動で、各国の旅行需要は旺盛だ。静岡空港の国際線利用者はコロナ禍前の2019年度、約27万人で、成田を頂点とする全国の空港の中で12番目。中国、韓国の路線を軸に、地方空港の中ではトップクラスの実績だった。復活が期待されるものの、静岡県内の観光需要は回復に力強さを欠く。県は、国際線定期便のさらなる再開と拡充に尽力すべきだ。
 国際定期便は離着陸する両国間の往来が活発化しないと実現しない。中国の成都、梅州の両市、韓国の全州市の計3都市と、日本代表の静岡県が舞台となる文化芸術の交流事業「東アジア文化都市」は観光交流拡大のチャンスだ。静岡県は23年度当初予算で関連施策を重点化したが、訪日客の呼び込みに比べ、静岡県民の中国、韓国への訪問の支援策がもの足りない。
 感染症対策に気を配りつつ、県民の海外渡航のてこ入れを検討したい。例えば、東アジア文化都市の中、韓3都市は特色ある食の文化がある。戦後最悪とされた日韓関係は正常化に踏み出したばかり。補正予算の編成も検討し、チャーター便の運航やツアー造成の助成などを通じ、日韓、日中交流を重視する姿勢を両国に示したい。静岡空港での定期便再開を待っていたら機を逸するだろう。
 沖縄県・尖閣諸島付近での海保巡視船と中国漁船との衝突事件で日中関係がぎくしゃくしていたころ、静岡県は「ふじのくに3776訪中団」を組織し、複数回の公式訪問団を友好提携関係にある浙江省に送った。「地方レベルの交流は末永く継続する」と省側は大歓迎し、静岡空港での中国路線就航の活発化につながった。当時、ネット上で「日本たたき」が横行したが、中央政府の意向が報道内容を左右する現地の新聞やテレビは尖閣問題をことさら強調していなかった。
 多国間の交流は複雑多様化している。訪日観光は団体から小グループ・個人へ、大都市から地方へ、の流れもある。コロナ禍前に戻すだけの観光振興策なら交流人口の拡大は望み薄だ。今年は富士山世界遺産登録10年の節目に当たる。中韓両国との連携は、実利を追う、戦略的連携の視点が欠かせない。国際交流施策は新たなステージを目指してほしい。

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