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テーマ : 編集部セレクト

大自在(3月24日)ロシア

 「せまい日本 そんなに急いで どこへ行く」。交通安全標語といえば、真っ先に50年前の秀作を思い浮かべる人が多いのではないか。年間死者が1万人を優に超え「交通戦争」とも言われた時代。ドライバーにゆとりある運転を呼び掛けた。
 子どもや運転免許を持たない大人に対しては、日本が狭い国との印象を抱かせた標語ともいえる。世界地図を見れば、近くのロシアの面積は世界1位で、中国は4位。太平洋を隔ててカナダは2位、米国は3位。どうしても広い国が最初に目に入り、比べてしまう。
 だが、日本が狭いとは言い切れない。国連加盟国193カ国の中で60位台。先進7カ国(G7)の中でまん中。ドイツ、イタリア、英国より広い。狭い、狭くないはともかく、広い国でも無謀な運転は重大な事故を招く。
 国土が日本の約45倍もあるロシアの交通死者は日本の10倍以上か。昨年の日本の死者は2610人。昨年11月、プーチン大統領はウクライナ侵攻に出征した兵士の母親に「誰もがいずれは死ぬ。交通事故でも年間3万人ほどが死ぬ」と語った。
 英国国防省は、ウクライナ侵攻から1年間のロシア軍の死者を4万~6万人とみている。「一人の人間の死は悲劇だが、数百万の死は統計上の数字でしかない」という言葉を耳にしたことがある。プーチン大統領にとって交通死者も戦死者も統計上の数字なのか。
 広大な国の指導者は、暴走してどこに行こうとしているのか。一人一人の悲劇に思いを寄せてブレーキをかけてほしいと願うロシア兵士の母親は多いはずだ。

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