大自在(3月21日)井川小中学校
静岡市中心部から北へ2時間ほど車を走らせた場所が井川地区。周囲を山々に囲まれ、大井川をせき止めた井川ダムのダム湖の周囲に集落が広がる。南アルプス登山の本県側玄関口でもある。
市立井川小中学校の全中学生4人が研究発表を行うと聞いて同校を訪れた。小学生の総合的な学習の時間から継続して探究してきたテーマを磨き上げたという。発表会にはオンラインで学識者も参加。広い視野から助言し、励ましもした。
取り上げたテーマは井川周辺の湧き水、井川から見る星空など。地元の豊かな自然を楽しみ活用するとともに、その魅力を広く発信したいという生徒の思いを強く感じた。
生徒と学識者とのやり取りを聞いて学生時代の卒論発表を思い出した。今春卒業の中学3年生にとってはまさしく卒業研究といえよう。時間をかけて住民など多くの関係者に話を聞いていることに好感が持てた。小規模校ゆえに教師が丁寧に指導できたという。
これからも探究を続けて内容を高めたいという生徒たちの言葉も頼もしい。進学で地域を離れても郷土のよさを発信し続けてほしい。とはいえ、地域の子ども数減少は深刻だ。転入者がなければ2024年度から同校の中学生はいなくなる。
井川地区は南アルプスユネスコエコパーク(生物圏保存地域)で、人が自然と調和しながら持続可能な社会の発展を目指す「移行地域」に当たる。焼き畑農業や豊富な伝統野菜など昔ながらの里山文化も残る。エコパーク登録から来年で10年。地域の魅力を末永く着実に受け継いでほしい。