あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 沼津市

お芋リヤカー レトロさ魅力 沼津の専門店、街中で「憧れの行商」

 全国で焼き芋がブームになる中、1960年代に普及したリヤカー行商を復活し、沼津市中心街を練り歩く専門店がある。リヤカーでの焼き芋行商は近年、奈良県や神奈川県など一部地域に残るものの、めったにお目にかからなくなった“絶滅危惧種”。そのレトロな魅力から、地元住民のみならずインスタグラムなどのSNSでも注目を集める。

リヤカーで焼き芋を販売する宮崎篤人さん(中央)と後藤師珠馬さん(左)。冬季は地元産みかんも販売する=2月中旬、沼津市内
リヤカーで焼き芋を販売する宮崎篤人さん(中央)と後藤師珠馬さん(左)。冬季は地元産みかんも販売する=2月中旬、沼津市内

 2月中旬、同市中心街で開かれた沼津あげつち商店街の稲荷市。煙突から煙を上げるリヤカーの前で、道行く人が次々と足を止めた。「物珍しさで売れる」と焼き芋専門店「イモテリア」運営者の1人、後藤師珠馬[しずま]さん(32)=同市=は笑う。
 一緒に手がける後藤さんと宮崎篤人さん(61)=同市=は、水産会社に勤務した約10年前に「古いもの好き」で意気投合。東京・下町の亀有育ちで、「子どもの頃に見た行商に憧れがあった」という宮崎さんが、リヤカーを使った焼き芋販売を提案した。
 2人によると、60~70年代、都内には約2千人の石焼き芋のリヤカー行商が存在し、多くは東北からの出稼ぎだった。焼き芋用のリヤカーを全国で探したが見つからなかったため、サツマイモ栽培や専門店が多く、本場として知られる埼玉県川越市の市立博物館に展示されていた現物を採寸。沼津市内の鉄工所に依頼しリヤカーと芋を焼く窯を再現した。
 2019年秋から週末限定で販売を始めたが、同市には焼き芋のリヤカー行商の文化がなく、「おでん屋とよく間違えられた」と宮崎さん。インスタグラムで次第に認知度が上がり、今では「都内の人の『懐かしい』という反応が多い」という。
 昨夏は同市千本東町の干物工場を改装してカフェの営業も開始した。3月末でいったん閉業し、今夏、同市志下への移転を予定している。宮崎さんは「夏は海の家として営業し、冷やしイモやかき氷を販売する。今後は平日を含め週4回行商し、いつか都内や川越でも売りたい」と夢を語った。

第4次ブーム 店舗続々  焼き芋は近年、「第4次ブーム」と言われ、県内でも専門店が急増している。2020年以降に少なくとも11の専門店が開業し、今年2月には専門店などが出店する「おいもフェス」が静岡市内で初開催された。
 サツマイモの知識の発信に努める一般社団法人さつまいもアンバサダー協会(東京都)の橋本亜友樹代表理事によると、江戸時代からブームを繰り返している。15年ほど前から続く第4次ブームは、電気式オーブンの出現によりスーパーでの焼き芋販売が始まったことや、甘みが強くてしっとり、ねっとりした新品種の開発などが重なり火が付いた。
 戦後、リヤカーや軽トラックに石焼き窯を乗せた石焼き芋の引き売り屋台が全国的に普及して第3次ブームになったが、近年は移動式店舗が減少。リヤカーでの販売は現在「全国的にほとんど見ない」(橋本代表理事)と言う。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

沼津市の記事一覧

他の追っかけを読む