あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 編集部セレクト

社説(3月10日)静岡県移住希望1位 施策充実し決断を促せ

 2022年の都道府県別移住希望地ランキングで、静岡県が3年連続で1位になった。首都圏から地方への移住支援に取り組む認定NPO法人ふるさと回帰支援センター(東京)がまとめた。移住に関する催しや相談体制を充実させ、20~70代の全世代で首位となった。
 センターへの22年の相談は5万2312件で前年比5・7%増。過去最多を更新し、事務局はコロナ禍の影響で地方移住への追い風が吹いていると説明した。首都圏在住者の動向に柔軟対応している都道府県が相談件数を伸ばしている。本県と市町が連携した取り組みが成果を上げた。
 移住希望者は就業をはじめ医療、買い物、教育などのさまざまな条件をクリアする必要がある。決断を促すため、移住希望者の個別の事情に配慮が行き届いた制度の充実を求めたい。移住者を招き入れる地域間競争は激しさを増している。
 一方、総務省の人口移動報告で明らかなように、静岡県は転出者が転入者を上回る全国有数の「転出超過県」だ。移住希望者が増加し、実際に移住に至った人は過去最多を更新しているものの、それを上回る勢いで県外流出が続いている。
 人口流出の要因分析は進んできた。静岡県がまとめた過去5年間の年齢別社会増減によると、20~29歳の流出が突出し、10~19歳が続く。女性の比率が高く、本県に戻らない理由は「やってみたい仕事や給与水準の高い仕事がない」が上位だった。
 ただ、50~69歳は全ての年で流入が流出を上回り、30~49歳と0~9歳は20年に流入増へと転じた。本県への移住者の8割超が子育て世代であることが背景にある。移住に至った人の動機では「住環境を変えたい」「子育て環境」が上位に並んだ。また、「好きなこと」「好きな場所」があると回答した人の割合が高かった。
 富士宮市は市内への移住希望者の暮らしを応援する「フジノミヤライフサポーターズ」を設けた。先輩移住者をつないだり、相談を受けたりと、希望者が富士宮での暮らしを想像しやすい環境づくりを進める。こうした動きは県内各地で活発化しており、地元住民が優れた地域資源を再確認する機会になっている。
 新幹線や高速道路など国土軸を担う基幹インフラが東西南北に走る静岡県は県外からの来訪に便利だ。ただ、気軽に帰ってこられる交通環境は、県外で暮らす決断も容易にしている。人口流出の問題は多様な観点で施策を構築していく必要がある。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

編集部セレクトの記事一覧

他の追っかけを読む