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社説(3月5日)浜松3区移行決定 さらなる行革の推進を

 浜松市が進める行政区再編で、現行の7区を3区に再編するための条例案が市議会2月定例会で可決された。10年以上にわたる議論を経て2024年1月1日から、中央、浜名、天竜の3区に移行することが正式に決まった。
 行財政改革を推進し、今春退任する鈴木康友市長16年の集大成と位置づけられるが、再編は手段であってゴールではない。市はコストと市民サービスのバランスを考慮し、削減だけでなく、重要課題には職員配置や予算を手厚くするなど柔軟な姿勢が不可欠だ。新たな段階の行政の在り方も見据えたい。
 市の説明では、区の統合により、事務の集約や区長ら職員81人の削減で年間6億5千万円の人件費が減る一方、地域課題に取り組む担当職員43人の拡充で年間3億4千万円の経費が生じる。初年度には区名変更に伴うシステム改修などで6億円余りが必要だ。このため、年間約3億円の節減効果が現れるのは移行から数年後になる。
 浜松市の人口は現在の79万人に対して40年は69万人、60年は58万人と推計される。税収が先細る中、高齢化率50%を超える集落が200カ所を上回るなど福祉の経費は当面増え続ける。伊豆半島より広い市域の管理道路延長は市町村で全国最長の8400キロに上り、橋やトンネルを含めインフラの老朽化対策に膨大な費用がかかる。
 行革の停滞は許されない。市は05年の12市町村合併以降、職員1300人削減、外郭団体の見直し、公共施設の統廃合などを断行した。5600億円超の市債残高を20%以上減らし、財政の健全性は政令市で屈指になった。この方向性は持続させるべきだ。
 区の再編は市長の諮問機関「行財政改革推進審議会(行革審)」が市政の最重点課題として実現を迫り、鈴木市長が11年の選挙公約に掲げながら、自民会派など議会の反対で進まなかった経緯がある。転機は19年の住民投票だった。当時の再編案は否決されたが、再編の必要性については「賛成」が僅差で上回り、議会での検討が加速した。
 3区への移行まで10カ月。市は区政担当副市長の新設、区協議会の再編、区役所に代わる行政センター設置などを示しているものの、市民の不安は依然、払拭されていない。市民サービスの低下や課題対応の遅延、「行政に声が届きにくくなる」など懸念が漏れる。不安解消につながるような丁寧な説明を続けなければならない。
 移行作業を滞りなく進めるとともに、デジタルや情報通信技術(ICT)の活用などで県内市町を先導する未来志向の都市像を提案してほしい。

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