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大自在(3月4日)二者択一

 参院予算委員会に舞台を移した政府予算案の審議。立憲民主党が「二者択一」の質問で岸田文雄首相を責め立て、活気づいた。立民は敵の軍事基地を自衛目的で攻撃する反撃能力により「自衛隊が盾で米国が矛」としてきた日米の役割分担が変わると迫った。
 一問一答でテレビ中継がある予算委は国会論戦の花形。首相は「米軍の打撃力に完全に依存しなくなる」と踏み込んだ。いよいよ国の安全保障の議論が本格化すると思えた。ところが、である。
 首相が火種をまいたのに質問は矛か盾かの二者択一に終始しがち。首相は「反撃能力はミサイル攻撃から国民の命を守る盾の能力だ」とかわした。盾と矛のイメージが頭の中でぐるぐると回り、訳が分からなくなった。野党の質問も首相答弁も神学論争のごときで、庶民感覚では意味不明だ。
 立民は続いて登壇した委員も「防衛予算か子育て支援予算か」と少子化対策で二者択一を持ち出した。防衛費捻出でぎりぎりの歳出削減を図り国民に負担を求めるのなら、少子化対策の予算はどこから出てくるのかと。
 ロシアのウクライナ侵略から1年。国会審議からは安全保障の将来像は見えてこない。少子化対策もしかり。権力を監視する健全な野党は民主主義に欠かせない存在だ。もとより、首相の説明不足が低調な論戦の主因だが、野党にも責任の一端がある。
 国民の暮らしも経済活動も二者択一で割り切れることの方が少ない。必要、不要を「取捨選択」する苦渋の連続である庶民に思いを致しながら分かりやすい国会審議をお願いしたい。

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