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テーマ : 浜松市

時論(2月27日)市民オペラを地域の文化に 

 大学時代、男声合唱のサークルに入っていた縁で神奈川県の藤沢市民オペラに出演したことがある。演目はロッシーニ作曲「ウィリアム・テル」。その他大勢の「住民」役だったが、高揚感は格別だった。同時に、舞台にかける市民の熱気を肌で感じた。
 市民オペラは、一般市民が関わって上演する、欧米のようなプロを抱える専用の歌劇場を長年持たなかった日本固有の文化とされる。藤沢市民オペラはその嚆矢[こうし]で、1973年の最初の公演から、今年で半世紀を迎える。
 出演者数や制作体制はもちろん、予算規模も大がかりなオペラを、地域住民主体でいかに実現し、根付かせるか。来年は浜松市民オペラが9年ぶりに上演される。ほかの自治体でも、官民の「縁」を総動員し、挑んでほしい。地域文化活性化への波及効果は大きい。
 昭和音楽大の石田麻子教授は著書「市民オペラ」(集英社新書)の中で、市民オペラを考える視点として「組織や人」「資金面の確保」「ホール建設」「上演機運の醸成」の四つを挙げる。同書でも触れるが、行政が関与する場合、人事異動にも配慮し、長期的な視点で高い専門性と人脈を持つ職員を育てることは重要なポイントの一つだ。
 地域にとって、さまざまな分野のプロと一緒に舞台を作る体験は、演奏面に限らず、アートマネジメント力など総合的なレベルアップにつながる。裏方を含め、オペラが紡ぐ広範な人の輪は、地域文化を下支えするだろう。
 地元が題材の創作オペラは見る側も親しみやすく、伊豆市民オペラ協会による「坦庵」の継続的な上演は好例だ。地域でオペラを手作りし、住民を挙げて支える営みは、シビックプライド(まちに対する市民の誇り)も高める。

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