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テーマ : 経済しずおか

静岡県内中小食品業界 消費者と直接取引拡大 収益性向上、商品開発に“声”活用も

 EC(電子商取引)サイトなどを通じて消費者と直接取引する「D2C」に取り組む動きが、静岡県内の中小食品製造業界で広がっている。卸業者を介さずに収益性を高めつつ、消費者目線に立った商品開発で競争力を高める。食品業界は製造業の中でも原材料高騰に伴う価格転嫁が遅れているとされ、各社はD2Cの手法で開発、販売の腕を磨き、苦境からの脱却を図る。

削り節などが並ぶ西尾商店の直売店。同社は利益率向上と消費行動の多様化への対応に向け、D2Cの拡充を継続する方針=2月上旬、静岡市清水区
削り節などが並ぶ西尾商店の直売店。同社は利益率向上と消費行動の多様化への対応に向け、D2Cの拡充を継続する方針=2月上旬、静岡市清水区

 和菓子原料製造の「小沼製餡」(静岡市駿河区)は、家庭で使いやすいパウチ式や小容量のかのこ豆など、消費者の要望を取り入れた商品を次々に開発し、ECサイトで販売する。直売所と合計した2022年の売上高は、19年比で倍増した。
 ECサイト開設当初は新型コロナウイルス拡大初期で、取引先の土産物業者が稼働を止めたため、数トンの在庫を抱えるなど苦戦した。しかし、SNS(交流サイト)開設などを契機にECサイトや直売所の存在が口コミで広がり、在庫を解消。反転攻勢に転じた。
 古川祐子社長は「中身は業務用と同じでも、商品の形を柔軟に変化させるなどの工夫が一般消費者に受けた」と話す。
 削り節製造の西尾商店(同市清水区)は、料理に振りかけてだしのうまみを手軽に楽しめるパウダー状のだし粉や、顧客からの要望を受けた独自配合のだしパックを開発し、販売する。自社製品を使っただし取りの講座を定期開催するなど、固定客確保にも余念がない。
 ECサイトや直売所での利益率は卸売りよりも3~4割高いという。西尾透雄専務は「原材料費が高騰する昨今は、利益確保のために原材料を安く調達するのが難しい。コストを削減しつつ、顧客と近距離で関わることで消費行動の多様化に対応していく」と言葉に力を込める。
 事業者のD2C導入を支援する動きもある。通販大手スクロール(浜松市中区)のグループ会社「スクロール360」(同区)は、ECサイトの集客増に向けたサービスを展開する。商品発送時に、利用客の購入履歴に応じたチラシやサンプルの封入を代行するほか、競合他社の調査も担っている。

 D2C Direct to Consumer(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)の略。事業者がECサイトなどを通じ、商品やサービスを顧客に直接販売する事業形態。D2C支援などを手がける売れるネット広告社(福岡市)によると、国内市場規模は拡大傾向で、2025年には19年比1・5倍の3兆円を突破する見込みという。

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