「じいじの富士山」闘病支えた写真群 沼津出身の実業家高木さん 亡き祖父の作品展示 都内で23日から
「じいじが遺した写真を多くの人に見てほしい」。沼津市出身の実業家高木龍さん(28)=川崎市=が23~26日、4年前に82歳で亡くなった祖父市野道弘さんが捉えた富士山の写真展を都内で初開催する。難病で闘病していた高木さんの心のよりどころだった祖父が、35年にわたりフィルムカメラで四季折々の霊峰を撮影した約40点を展示する。
高木さんは幼少時代、御殿場市に住む祖父の撮影に何度も付いていった。そこで見たのは、天候に左右され思い通りに撮影できなくても、愚痴一つこぼさず富士山を撮り続ける祖父の姿だった。
沼津高専入学半年後に難病を発症した高木さんは3カ月強の入院で、毎週のように手術を強いられた。何度手術しても完治しない病状に嫌気が差した時、祖父が写真を届けてくれた。「今日の手術で終わると期待するから落胆する。ため息もつかず写真を撮り続ける祖父を思い出し、精神的に助けられた」
高木さんは祖父の死後、作品の著作権を取得。常に持ち歩き、出会う人々に、祖父との思い出や写真の魅力を伝えた。写真コンテストでの入賞経験がある祖父の作品は、プロ写真家にも好評だった。今回の写真展は会場の「広尾プラザ」(東京都渋谷区)の関係者の目に留まり、実現が決まった。
著名な撮影スポットに足を運ばなかった祖父の写真は「20年近く富士山の近くに住んでいても知らない富士山の一面を教えてくれる」という。「富士山の良さを伝え、日本への関心にもつなげたい」。祖父との思い出を携え、海外で個展を開く日も夢見ている。