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テーマ : 政治しずおか

人口減少対策 政策打つも成果乏しく【政令市長 成果と課題⑤/静岡市㊥】

 「あらゆる施策を他自治体に先駆けて打ってきた。マクロで見れば、ある程度食い止められた」。静岡市の田辺信宏市長は1日の定例記者会見で市の人口減少対策の成果を問われ、こう言い切った。

静岡市の推計人口の推移
静岡市の推計人口の推移

 田辺市長は2015年の市長選で「市民70万人の活力維持」を公約の一つに掲げた。同年度に始まった第3次市総合計画でも定住人口維持を最大の目標に据え、同年に政令市として初めて東京・有楽町に「移住支援センター」を開設、翌16年には県外の大学に通う学生への新幹線通学費貸与を開始するなど次々と施策を打った。特に通学費貸与事業では利用者の6割が市内に定住。事業開始前は市外へ進学後に市内に戻る卒業生は4割弱だったことから、若者の定住に一定の貢献があったと言える。
 しかし、少子高齢化による自然減には逆らえず、17年4月にはついに推計人口が政令市の目安とされる70万人を割り込み、19年には住民基本台帳人口も70万人を切った。田辺市政の12年間で約3万人が減少し、22年12月現在の推計人口68万2619人は政令市で最下位。施策によって人口減少を抑えてきたと胸を張った田辺市長だが、政令市で人口規模が同程度の岡山市や相模原市と比べ、減少率が高いのが実態だ。
 特に減少数が顕著なのは若い女性。高校卒業後に進学のため首都圏に転居し、そのまま就職や結婚、出産するのが路線となって久しい。女性の活躍推進事業や、雇用創出に向けた企業誘致も進めるが、ある職員は「他都市にも似たような制度があり、違いを出せていない。現状を打開するパンチの効いた施策はない」ともどかしげに語る。別の職員は「良い取り組みをやっても、認知されていない」と、市の魅力発信力の弱さも指摘する。
 推計人口が70万人を割って以降、田辺市長は「人口70万人維持」の目標について「必ずではない」「ハードルが高かった」との認識を口にするように。23年度から始まる第4次市総合計画では定住人口に替えて、交流人口や関係人口の拡大を目指すと方向転換した。
 清水区のベテラン市議は「人口が減ること自体は仕方ない。原因は一つではなく、難しい課題」との認識を示しつつ、「思い切った税制優遇による企業誘致など、もう少しできることはあったのでは」と苦言を呈した。

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