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社説(2月8日)県内転出超過 若者引きつける工夫を

 総務省が公表した2022年の人口動態報告(外国人含む)によると、静岡県は転出者が転入者を上回る「転出超過」が4658人を数えた。新型コロナウイルス禍にあった20、21年の転出超過は対前年比で減少していたが再び増加に転じた。転出超過は全国で8番目に多い。
 さらに日本国籍者に限ると6038人の転出超過になって福島、広島県に次ぐワースト3となった。本県は外国人の転入者が多いため、合算すれば深刻度が薄まる印象がある。しかし、外国人を除く日本人のみで数えれば常に人口流出県のトップクラスにある。
 課題は明白だ。流出の中心は若者。22年の日本人の転出者は5万4849人。うち10~39歳は3万8561人で全体の7割を占める。受け皿となる進学先や就職先を充実させる必要がある。進学先となる学校を短期間で増やすことはできないが、まずは働く場を整えることから始めたい。若者を引きつける場づくりが大事だ。
 県内市町の転出超過(日本人のみ)は、御殿場市1153人、静岡市736人、富士市553人、三島市415人など。浜松市は299人。静岡市は清水区だけで704人の転出超過。一方で転入超過は3市3町を数えた。
 労働生産人口の柱となる若者や子育て世代が減少すれば、消費が落ち込んで経済活動も衰える。深刻なのは若い女性の減少だ。少子化が進み、人口の自然減が衰退に追い打ちをかける。
 新型コロナの出口が見え始め、再び東京への一極集中復活の兆しが現れている。行政の政策担当者は20~30年後の郷土の姿を楽観論抜きに想像してほしい。製造業などの企業立地や中小企業の経営革新など、雇用の場の創出はもっと強化する必要がある。県内各地では子育て世代などを対象にした移住促進の取り組みも進む。地道でも丁寧に積み重ねていくことが重要だ。
 近年では交流人口、関係人口という考え方もある、ただし、受け入れ先となる地域に必要な数の住民がいることが前提になる。改めて人口の維持が欠かせないと言えよう。もちろん県や市町でできることは限られる。政府が効果的な対策を講じなければ一極集中の流れは止まらない。地方から現状を伝え、強く働きかけてもらいたい。
 情報通信技術の向上と感染力の強い新型コロナの流行は、オンラインによる会議やセミナー、居住地を問わないリモートワークの可能性を気づかせてくれた。仕事と余暇を結びつけたワーケーションの動きも注目されている。こうした流れを確実に地域の振興に結びつけていきたい。

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