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テーマ : 政治しずおか

公共整備計画 ハコモノ 慎重姿勢一転【政令市長 成果と課題④/静岡市㊤】

 「何とか沈没させないよう清水港の海洋文化施設の実現にこぎ着けた」。ドリームプラザの大井一郎社長(63)は、3期12年間を務め、今春の市長選への不出馬を表明した田辺信宏静岡市長(61)を感慨深げにねぎらった。同施設整備の関連予算案が市議会で可決され、パートナーとなる事業者の落札も昨年秋に決まった。残すは契約のみとなった。

静岡市が建設予定の清水港の海洋文化施設完成予想図(市提供)
静岡市が建設予定の清水港の海洋文化施設完成予想図(市提供)

 建設費約100億円は静清合併後で最大。一度、市議会を通った予算がコロナ禍で白紙になるなど曲折した。事業者と市で利益や損失を分担する手法に懐疑的な見方もあったが、2026年4月の完成を目指して計画が進む。
 田辺市政を代表する「ハコモノ」となった海洋文化施設。近年は歴史博物館の建設や市民文化会館の再整備、JR清水駅東口のサッカースタジアム構想など公共整備が目立つ。
 「1期目、2期目は財政規律を堅持しつつさまざまな事業の種をまいてきた。3期目の第3次総合計画終盤を迎えた今、それらは少しずつ花開こうとしている」。任期約1年を残した2022年の市議会2月定例会で自民党議員の質問に田辺市長はそう答弁した。別の市議は「財政健全化路線を修正するという宣言と受け止めた」と振り返る。20年度の市の実質公債費比率(収入に対する借金返済の割合)は、田辺市長が就任した11年度から6ポイント近くも改善し6・5%になった。
 田辺市長は就任前、ハコモノ整備に慎重な政治家と目されてきた。1998年の県議在籍当時に、架空の都市を舞台に著した小説「新駿河市/200X年」は、旧清水市と旧静岡市中心部を結ぶ新交通システムの整備が物語の縦糸となっている。県議を辞して衆院選に挑戦し、落選した後の04年10月には本紙投書欄への寄稿で「行政が多額の税金で公共施設を建設する時代ではないだろう」などと記した。
 その志とは相反するかに見える市長任期終盤に相次ぎ打ち上げた公共整備計画。「4期目を見据えた行動だった。有権者に分かりやすい実績を示したかったのでは」と市議らは推し量る。
 ハコモノ自体の是非よりも「市長のビジョンの不足」を指摘する声がある。ある有力企業幹部は、一部の反対で頓挫した城北公園(同市葵区)の人気カフェ誘致を核とした再整備を例に「当初のビジョンを貫こうという意欲が感じられなかった」と指摘する。
 東静岡のアリーナ整備をはじめ、打ち上げた数々の整備構想は道半ばも多い。何が本当に必要で、何が不要なのか、市民の議論は生煮えのままだ。

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