エスパルス/戦い方の幅広がる ジュビロ/切り替え球際徹底 鹿児島キャンプ総括
J2磐田と清水が鹿児島での春季キャンプを終えた。練習試合を組み込みながら、約2週間後に迫る開幕に向けて、戦い方の定着や課題の洗い出しを図った。
清水 新布陣導入 好感触の内容
清水は昨季途中に就任したリカルド監督の下、戦い方の大枠となるゲームモデルの構築に始動から取り組んできた。軸となるのは、ボール保持と前線からの積極的な守備だ。
キャンプでは基本のスタイルを実戦形式の練習で浸透させつつ、戦い方の幅を広げる取り組みにも着手した。基本としていた4-4-2の布陣に加えて、新たに3バックの導入に取りかかった。
リカルド監督が昨季の試合で3バックを採用したのは数回。いずれも試合途中の限られた時間で、守りを固めることが目的だった。本格的なトライは、「違ったオプションを持てるように」との指揮官の狙いがあった。
新布陣をテストした4日の磐田との練習試合は、好感触の内容となった。3-4-3のシステムで、前線の3トップがスイッチ役となり守備が機能。J1名古屋で昨季3バックを経験しているDF吉田は「プレッシングもつなぎも良かった」と手応えを口にした。
システムに選択肢が生まれることで、メンバーが固定されず競争を促す効果も期待できる。磐田戦では、昨季は控えセンターバックだったDF井林が3バックの布陣の主力組で出場機会を得て、最終ラインを統率した。
キャンプ中、去就が決まっていなかったGK権田、MF松岡、FWチアゴサンタナのチーム残留が決定。けがで離脱中の選手も4人まで減り、アピール合戦は熱を帯びる。
練習試合ではJ2の熊本、磐田に連勝。順調にも見えるが、DF鈴木は「基準をJ2に置くと自分たちの成長を止める。まだまだ改善しないとJ1で勝つのは難しい」と言う。高みを見据え、開幕に向けてチームづくりの仕上げ段階に入る。(運動部・市川淳一朗)
磐田 横内監督、変化を実感
今季から磐田の指揮を執る前日本代表コーチの横内監督は攻守の切り替えと球際の強さという基本をキャンプのテーマに掲げ、取り組んだ。42試合と長丁場のJ2を戦う上で「ベースの上に戦術がある」との考え方だ。
1月下旬に行ったJ2大分との練習試合。「速く戻れ」。帰陣が遅れたベテラン2人に対して指揮官が声を荒らげた場面があった。日本代表経験者でも容赦せず、あらためて基本の徹底を図った。
Jクラブとの練習試合3戦のうち、J3から昇格したいわきに辛うじて競り勝ったが、J2上位候補の大分と清水には3失点と完敗。清水戦後、「切り替えも球際もまだまだ足りない」と及第点は出さなかった一方、「意識してやっている」と選手の変化を口にした。MF金子は「ぬるいと言われた昨季の磐田に足りなかった部分だ」と自覚する。
ピッチ内外で選手と積極的に意思疎通を図った。ミーティングでクロアチア代表の映像を流して自らの経験を伝えた。宿舎の食事会場やエレベーターで、居合わせた選手個々の状態を確認し練習内容の感想を求めた。「一方通行でやるつもりはない」との方針で、セットプレーのアイデアについて選手から自発的に提案も出始めた。
FWファビアンゴンザレスの契約問題で今季補強ができない磐田は9割のメンバーが残留。主力の高齢化や決定力不足という課題は解消されていない。
ここまで主力組を固定せずメンバーや布陣を公表しない徹底ぶり。開幕スタメンは「磐田に戻ってスタッフと考えたい」。新人FW後藤や2年目のMF古川が成長の兆しを見せているだけに指揮官の人選に注目が集まる。(運動部・名倉正和)