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障害者団体の陳情不採択 福祉交流センターの無料利用継続 浜松市に厳しい意見も

 浜松市議会厚生保健委員会は2日、市内障害者団体から提出された市福祉交流センター(中区)の無料利用継続を求める陳情書を審査し、採決の結果、賛成少数で不採択とした。市条例の厳格な運用に理解を示す声が大半を占めた一方、センターの在り方や曖昧な運用を続けてきたことに対しては厳しい意見が相次いだ。
 陳情書を出したのは市身体障害者福祉協議会と市視覚障害者福祉協会。市の厚意で20年以上施設を予約して無料利用し、リハビリの一環で卓球に取り組んできたが、規約を定める市条例に基づき、4月から団体として利用する際には料金の支払いを求められていた。
 市福祉総務課は「現在約5割の稼働率を上げたい。公平性を保つ観点でも市条例に基づく運用を求めた」と説明。障害者の場合、当日利用の個人は無料、事前予約できる団体は通常の半額となる規定に触れ「個人は予約できないが、希望日の数カ月前にはある程度の空き状況は分かる。今までに近い形で利用できるよう話し合いたい」と理解を求めた。
 これに対し、複数の委員はセンターが障害者の福祉増進を図る目的で設置している点を指摘。「今のような形で本来の目的が達成されるのか」と疑問を呈した。他の委員も「長年市条例に沿っていなかった。完全に市の手落ち」と非難した。障害者スポーツへの支援や市条例の見直しを求める意見も出た。
 委員会を傍聴した同協会の安松和男会長は「週1回の卓球は障害者が外出するきっかけや交流の場になっている。非常に残念。障害者の立場に立ち、利用しやすいセンターにしてほしい」と話した。

 ■記者の目 福祉行政の在り方 再考を
 浜松市福祉交流センターの利用を巡り、市が障害者団体側に市条例に基づく厳格な運用を求めたことは公平性の観点で当然とも言える。ただ、センターの在り方や障害者福祉についての考えには首をかしげざるを得ない。
 市条例ではセンターを「障害者等の福祉の増進を図り、市民の生きがいの創造と社会参加を促進するために設置する」と規定する。だが、2日の市議会厚生保健委員会で市は、協働センターなど他の「貸館」と同じ位置付けとし、「福祉にしか使えないという誤解を解き、稼働率を挙げたい」と説明した。
 民間ができないことを支えるのが行政のはず。委員が「名称を『交流センター』にすればいいのでは」と皮肉交じりで指摘したが、その通りだ。「福祉」をうたうのなら、当事者が使いやすい施設であるべきだろう。
 社会人になり20年以上、生まれ育った浜松を外から見てきたが、福祉が遅れていると常々感じていた。市条例の見直しも含め、福祉行政について、いま一度考えてほしい。

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