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テーマ : 編集部セレクト

大自在(2月2日)霊峰富士

 人々が火を噴く霊山として恐れ各地に浅間神社がまつられた富士山。火山活動が沈静化した平安後期、山岳信仰と密教が習合した修験道の道場となる。15世紀に入ると修験者の導きで「登拝」は広まった。
 民間信仰として体系を形作ったのが富士講。講員として登山者の宿泊を支援した御師[おし]の活動で登拝は大衆化する。伊勢国一志郡川上村(現・三重県津市)出身で富士講中興の祖と称される食行身禄[じきぎょうみろく]が残した歌が奥深い。
 〈不二(富士)の山 登りてみれば何もなし 良きも悪しきも我[わ]が心なり〉。これを引いて「富士山は心の山なり」と称される。人々が霊峰の神々しさに心を打たれるのは、他者の支えをありがたいと感じる自分の心があるからこそ。
 久しぶりに富士宮市の「ふもとっぱら」を訪ね、極寒の週末キャンプを楽しんだ。間近に富士山を仰ぐキャンパーの聖地。未明に寝袋を抜け出し、見上げた満天の星は格別だった。世界遺産富士山は信仰の対象と芸術の源泉として普遍的価値を認められたが、静岡、山梨両県にある25の構成資産に霊峰と共演する星空を加えてもいいと感じた。
 富士山麓のキャンプ地は、コロナ禍でのアウトドア志向もあり盛況と言う。ふもとっぱらでは静岡ナンバーの車は数えるほど。関東や中京圏が多く東北や関西からの来訪者も。驚いたのはソロキャンパーの多さ。3分の1ほどがソロの印象だった。
 全国から人々を誘う富士山。キャンプサイトに広がる満面の笑み。日本人はなぜ富士山が好きなのか。美意識や精神文化を語り合いたくなった。

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