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社説(2月2日)民生委員の不足 支援体制と理解 促進を

 地域の福祉を最前線で支える民生委員の担い手不足が深刻だ。昨年12月の全国一斉改選で定数約24万人に対する欠員が1万5191人に上った。戦後最多とみられ、働くシニア層の増加や負担感の増大などが背景にある。行政の支援や高齢化、孤立の深まりの中で役割を増す活動への理解が不可欠だ。
 民生委員は独居高齢者を訪問したり、ひきこもりや児童虐待に関する相談を受けたりして、行政や福祉サービスに橋渡しする役割を担う。町内会などが住民から候補者を選び、都道府県知事などの推薦に基づき厚生労働相が委嘱する。児童委員を兼ね、任期は3年。無報酬で、交通費など活動費は支給される。
 定数は世帯数を基準にしているため、3年前の前回に比べ、単身化の流れの中で微増した。一方、実人数は2850人減少し、充足率は93・7%で1・5ポイント下がった。静岡県全域の委員数は約6700人で充足率は96・5%と全国平均を上回るが、定数を満たしている自治体は5市町にとどまる。
 かつては退職後に就任する委員が大半だったが、雇用延長の影響で仕事をしながら活動を担う委員が県内でも増えている。県によると、被雇用の委員の割合は約3割。活動時間を確保するためには企業側の理解が重要で、啓発を強化する必要がある。神奈川県社会福祉協議会は、活動と仕事などを両立している委員の傾向として「委員同士の支え合いができる」など11のポイントを挙げホームページに掲載している。
 住民が抱える生活課題は複雑化し、委員からは精神的負担として「プライバシーにどこまで踏み込んでいいか戸惑う」との声も多い。静岡県は2019年、民生委員を補佐する協力員制度をスタートさせた。個々の活動を支援する「ペアサポーター」と地区組織の運営を補助する「エリアサポーター」があり、昨年12月時点で88人。特に新任の委員には心強い制度で、さらに裾野を広げたい。
 神戸市は昨年、大学生を対象に民生委員の活動体験を実施した。参加学生からは「なり手が少ない中でも、この活動がなくなってはいけないと思った」との感想もあった。地域社会のセーフティーネットとしての重要性を、幅広い世代が共有する機会として参考になるのではないか。
 民生委員制度は大正時代、富士市出身の笠井信一氏が当時知事を務めていた岡山県で創設した「済世顧問制度」が起源とされ、本県とも縁がある。住民目線によるつなぎ役の大切さは、時代を問わない普遍性がある。

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