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社説(1月27日)国会論戦スタート 正面から議論を尽くせ

 岸田文雄首相の施政方針演説に対する代表質問が衆参両院で始まった。施政方針で日本の安全保障政策の大転換とした防衛力の抜本的強化や、最重要政策と位置づけて「次元が異なる」とした少子化政策などについて、ようやく国会での議論が緒に就いた。
 首相は「決断した政府の方針や、決断を形にした予算案・法律案」を「国民の前で正々堂々議論をし、実行に移していく」と施政方針で述べた。とはいえ、決断に至る理由や今後の進め方などが十分に説明されていない。首相も大転換や異次元と言うからにはそれなりの議論の深化が必要ではないか。言葉通りに課題に正面から向き合い、論点となる説明をしてもらいたい。
 質問に立った立憲民主党の泉健太代表は「防衛費は額や増税ありきで、国会での議論はなく、乱暴な決定だ」と批判した。防衛費増額に伴って増税するなら衆院を解散して国民に信を問うべきだと迫った。ただ、野党としても批判に徹するばかりでなく、対立軸をしっかりと示すことが求められる。
 防衛費財源について首相は「国民の負担をできるだけ抑えるべく、行財政改革の努力を最大限行う」とし、増税問題については明確に触れなかった。衆院解散は、「何についてどのように国民の信を問うかは、時の首相の専権事項として適切に判断する」と述べるにとどまった。
 自民党の茂木敏充幹事長がただした少子化対策は、「待ったなしの先送りの許されない課題」「子ども、子育て政策は最も有効な未来への投資」とした。しかし、具体内容と財源は、6月の「骨太方針」までに予算倍増に向けた大枠を示すとの答弁を繰り返した。
 防衛予算は倍増、少子化予算も倍増と威勢よく聞こえるが、国家財政は厳しい限りだ。今国会に提出された2023年度予算案では、歳入の3割を国債発行による借金で補う。他方、借金の利払いに充てる国債費が歳出の2割強を占める。かけ声だけに終わらせず具体的にどう財源を確保するかを、国会は厳しく検証しなくてはならない。
 茂木氏からは、一部の高収入世帯を対象外としている児童手当の所得制限を撤廃すべきという提案もあり、場内が沸いた。かつて旧民主党政権が所得制限なしで創設した「子ども手当」に反発したのは自民で、立民は茂木氏は所得制限を主張していたと批判する。
 茂木氏の提案も少子化の深刻さを示す証左かもしれないが、まず自民が自らの子育て政策を総括する必要があるのではないか。政府・与党は国民の声を聴き、柔軟に対応してもらいたい。

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