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野菜の”種”貸します 浜松「種の図書館」 食の安全へ固定種守る 育てて収穫、一部を返却

 貸すのは本ではなく種―。「固定種」「在来種」と呼ばれる地域に根付いた野菜の種を守ることを目的にした「シードライブラリー(種の図書館)」の活動が浜松市で進む。借りた種で作物を栽培し、収穫した種の一部を返却する仕組みで、図書館の本の貸し出しになぞらえている。遺伝情報を変えたゲノム編集食品の登場により、地域で育まれてきた作物の環境が変化する中、種や栽培の新たな循環の形を目指している。

固定種や在来種の種を自由に借りることができる「シードライブラリー」。「ヘチマおじさん」として啓発活動に取り組む川田忍代表が管理している=1月中旬、浜松市中区のあいホール
固定種や在来種の種を自由に借りることができる「シードライブラリー」。「ヘチマおじさん」として啓発活動に取り組む川田忍代表が管理している=1月中旬、浜松市中区のあいホール
シードライブラリーの仕組み
シードライブラリーの仕組み
固定種や在来種の種を自由に借りることができる「シードライブラリー」。「ヘチマおじさん」として啓発活動に取り組む川田忍代表が管理している=1月中旬、浜松市中区のあいホール
シードライブラリーの仕組み

 取り組んでいるのは市内の生産者らでつくる任意団体「はままつ種ねっとわーく」(川田忍代表)。種の消滅を防ぎ、子どもの食の安全を守ろうと、あいホール(中区)とはまゆう図書館(西区)の協力を受けて2022年4月、両施設に“図書館”を開設した。
 会員の生産者ら約20人から提供を受けた小松菜やカボチャ、トマト、ナスなど自家採取した50~60種の種を、川田代表が季節ごとに入れ替えて展示し、誰でも自由に借りることができる。貸出件数は開設から10カ月弱で130件に上る一方、返却は5件にとどまり、循環の促進が今後の課題という。
 同様の取り組みが全国的にも広がる中、川田代表は「種採りはなじみがなく、採った種をまくことができるということを知らない人も多い」と指摘する。シードライブラリーに加えて「ヘチマおじさん」として、保育園やイベントなどで種の大切さを普及する活動にも取り組んでいる。
 ゲノム編集食品の種が自然界に無秩序に広がることにも危機感を募らせながら「子供たちの未来のためにも固定種や在来種の種を守り、つないでいきたい」と強調する。

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