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社説(1月24日)首相施政方針演説 少子化対策 本気度示せ

 通常国会が召集され、冒頭で岸田文雄首相が国政の基本方針を示す施政方針演説を行った。首相は昨年末以来、打ち出してきた防衛力の強化や「次元の異なる少子化対策」に向けた決意を強調した。
 防衛力の抜本的強化では2023年度以降の5年間で43兆円の予算確保を説いた。反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有やサイバー・宇宙など新領域への対応を進めるとし、裏付けとなる毎年度4兆円の財源が欠かせないと訴えた。しかし、不足するという約1兆円は「将来世代への責任として対応」とだけ述べ、増税とは明言しなかった。
 子ども・子育て政策は「わが国の経済社会の持続性と包摂性を考える上で最重要政策と位置づけた」。昨年の出生数が80万人を下回る推計を踏まえて「社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際」にあると危機感も示した。
 一方で少子化対策の具体的検討はこれから。予算倍増に向けた大枠提示も6月の骨太方針までにとした。「待ったなしの先送りの許されない課題」と意気込む割には生煮えで、どこが「次元の異なる」施策なのか分からない。
 政府はこの30年間、少子化対策に取り組んできたが、出生数は右肩下がりのままだ。子どもが減れば首相が強化を訴える防衛を担う人材も将来的に減ることになる。既に自衛隊員の募集に影響が出ているとされる。「子ども・子育ては未来への投資」などと言葉を並べるだけでは国民の将来不安は払拭できない。本気度を示してほしい。
 防衛力強化は国民不在のまま議論を進めて閣議決定。昨年末の訪米でバイデン大統領に報告して米側の支持を取り付けた。こうなると国際公約だ。国会で正面から議論せぬまま、対外的にそんな約束をして禍根を残さないか。
 防衛増税の議論も国民の理解を得ていない。歳出改革などでの捻出分も実現できるかは不透明だ。防衛費の増加が予算を圧迫し、結果的に国債が増えれば、それこそ将来世代に対して無責任きわまりないと指摘したい。
 議論を欠いたままなのは、原発の建て替えと60年超の運転期間延長も同じだ。東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故から3月で12年となる。原発の安全性に対する不安と不信が解消できぬまま、再び原発に回帰することに国民の理解をどこまで得られるのか。丁寧な説明が必要だ。
 原発稼働には使用済み核燃料の最終処分も避けては通れない問題だ。首相は「国が前面に立つ」と述べたが、具体的に何をするのか。納得できる根拠を示して説明してほしい。野党も論戦を通じて検証する必要がある。

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