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大自在(1月23日)「半農半X」

 「半農半X」と聞いてピンとくる人は少ないだろうが、農業再生の知恵として政府も着目するキーワードになっている。日本の農漁村の実像として、収益確保が難しい1次産業の課題として学んだ「半農半漁」は様変わりしてきた。
 きっかけは農業従事者の確保策。都市の人々に職業として農業を選択してもらうため何が必要なのか。思案した人たちは一生懸命に農業に向き合ってくれるのなら兼業する職種は何でも構わないと考えた。だから「X」。農業再生策の発想転換でもある。
 人口急減地域での就労を支援する2020年の法施行が後押しした。先駆けた京都府北部の綾部市は「移住を考えるあなたをオール綾部で歓迎します」と訴え、移住促進策として半農半Xを前面に出している。
 市はホームページに田舎生活実践塾など多彩な支援策を並べている。移住した人のXは多彩で、画家ら芸術家が数十人に上る。看護師や自然食研究家、翻訳家も。共通しているのは「新たな生き方、暮らし方」。
 滋賀県は「半林半X」を打ち出した。林業大学などより短期の、半年の研修スケジュールで即戦力を育てる。全国最上位の平均年齢の若さや百貨店・スーパーの数を、暮らしやすさのデータとして示している。
 綾部市では、移住者に触発された高齢農家が民泊を始め「若い人にパワーをもらう」と話した。デジタルの力が移住や多地域就業に貢献している。ただ、多くの移住者は人々が影響し合うアナログ社会で濃密な時を過ごす。Xの実践には地域再生やビジネスのヒントが随所にある。

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